研究課題/領域番号 |
17J00106
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
中村 繁成 法政大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 分散システム / 情報流制御 / 不正情報流 / P2Pモデル / PSモデル |
研究実績の概要 |
分散システムでは、ノード間の協調動作により各ノードの保持する情報が交換され、機密情報を含む様々な情報がノード間で流れる。このとき、オブジェクトに対する権限のないユーザが他のオブジェクトを経由して情報にアクセスできてしまう不正情報流が生じる。本研究では、分散システム全体での情報流制御を考えている点に特長がある。 本年度は、分散システムの新しいモデルとして着目されてきているpeer-to-peer (P2P)型のトピックベースなpublish/subscribe(P2PPS)モデルにおける情報流制御の研究を行った。P2PPSシステムは対等で自律的なピア(プロセス)で構成される。各ピア(subscriber)は、興味のあるトピックを示す(subscribe)。一方、他のピア(publisher)はそのトピックに関するメッセージを発行し、興味のあるsubscriberにのみ通知される。各ピアはpublishとsubscribeの両方を行える。最初に、システム上の各ピアが各トピックに対してどのような操作を行えるかを示すトピックベースアクセス制御(TBAC)モデルに基づいて、不正情報流の生じる可能性のあるピア間の情報流関係を論理的に明確にした。このような関係に基づき、不正情報流を起こす可能性のあるメッセージを検知し、この受信を禁止することで不正情報流を防止する方式を考案した。本年度に提案した方式では、トピック間の関連性を新たに考慮した。各ピアは、subscribeしているトピックに関連するトピックを新たにsubscribe可能にしていくことで、自身の興味の及ぶ範囲を拡大していく方式を提案した。このようにすることで、受信を禁止されるメッセージ数を減少させることができ、これまで研究を行ってきた情報流制御方式に比べ、システム全体での負荷を減少できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、P2PPSシステムにおいて、ピア間で生じる不正情報流を防止する方式の研究を行った。システムにおけるトピック間の関連性を新たに考慮し、これに基づいて、各ピアがsubscribeしているトピックに関連するトピックを新たにsubscribe可能にしていく情報流制御方式を提案した。本提案方式を用いることで、不正情報流を起こす可能性のあるメッセージの受信を禁止することによってシステム全体で生じる不正情報流を防止でき、さらにこれまでに研究してきた他の方式よりもシステム全体における負荷を減少できることを示した。これらの研究成果を、国際学術論文誌やIEEE AINA等の国際会議で論文として発表し、Best paper賞(NBiS-2017, Toronto, Canada)を受賞する等、国際的にも高い評価を得ることができた。 本情報流制御方式を、システム全体において受信を禁止されるメッセージ数の観点で評価するために、シミュレータの研究開発を新たに行った。開発したシミュレータでは、システムにおけるトピック間の関連性を新たに考慮するようになり、より現実世界に近いシステム環境を想定したシミュレーションを行うことが可能となった。これまでに提案してきた他の情報流制御方式に対しても適用でき、より現実的な環境でのシミュレーションを行うことが可能となった。実際にシミュレーションを行った結果、トピック間の関連性を考慮しないシステム環境下に比べ、受信を禁止されるメッセージ数を減少できることを示すことができた。これらの研究成果を生かして、来年度の研究を推進する予定である。 以上のことを踏まえ、本研究の進捗状況は「おおむね順調に進展している」である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、P2PPSシステムにおけるトピック間の関連性を新たに考慮し、これに基づいて、システム全体で生じる不正情報流を防止し、さらにこれまでに研究してきた他の方式よりも受信を禁止されるメッセージ数を減少できる情報流制御を提案した。本提案方式を評価するために新たなシミュレータの研究開発を行った。このような研究成果を踏まえて、最初に、本年度に研究開発を行ったシミュレータを改良することで、より現実的なシステム環境を想定し、受信を禁止されるメッセージ数以外の様々な観点についても着目したシミュレーションを行うことが可能なシミュレータを新たに研究開発する。改良を加えたシミュレータを用いて、これまでに研究を行ってきた情報流制御方式におけるシミュレーションを行い、得られたデータを蓄積し、解析する。解析結果を踏まえ、受信を禁止されるメッセージ数をこれまでに研究を行ってきた方式よりもさらに減少できる方式、もしくは他の観点についての有用性を見出せる方式を新たに考案する。 さらに、これまでに研究を行ってきた、ピア間での不正情報流と情報流関係を定義する考え方を、他の分散システムのモデルに応用し、対象となったモデルにおける不正情報流防止方式を新たに提案する。提案する方式について、不正情報流の生じる数を中心とした様々な観点から評価し、有用性を明らかにする。研究成果を論文としてまとめ、国際学術論文誌、国際会議等で積極的に発表していく。
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