研究課題/領域番号 |
17J00136
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
石田 隆太 慶應義塾大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 個体化 / 非受容性 / 質料形相論 / 天使 / 超越概念 / 種 |
研究実績の概要 |
1、個体化の原理という概念の分析として、(1)トマス・アクィナスの天使論に焦点を当てて、任意の形相の非受容性の根拠が個体化の原理の本質的な規定であるという解釈を論文で発表した。(2)トマスの個体化理論全体において非受容性の根拠を見出す解釈を論文で発表した。(3)トマスとボナヴェントゥラの天使論を範囲として、ボナヴェントゥラは個体化の二元的な原理(すなわち形相と質料)を被造物に対して一様に適用しているのに対して、トマスは個体化の一元的な原理(質料、形相、存在など)を神をも含めた様々な事物に多様な仕方で適用しているという解釈を学会発表で提示した。(4)トマスとボナヴェントゥラの魂論を範囲として、ボナヴェントゥラは質料と形相が相互に切り離しえないことを強調するのに対して、トマスは魂の個体化の始まりと終わりにわたる全体を根拠づけようとしているという解釈を研究発表で提示した。ボナヴェントゥラはドゥンス・スコトゥスに影響を与えた先駆者の一人であるため、(3)および(4)はスコトゥス研究にそのまま資するものである。 2、個という概念の分析として、(1)個という概念をトマスの哲学体系において超越概念として捉えるという解釈を論文で発表した。(2)トマスによる天使の種別化に焦点を当てて、テクストごとにトマスの論証手順が異なるという解釈、およびトマスは本質そのものを体現する個体という意味で例化不可能な個体概念を想定しているという、生物学哲学の知見を参照した上での解釈を研究発表で提示した。 3、翻訳研究として、(1)トマス著『定期討論集 霊的被造物について』、(2)スコトゥス著『「命題集」講義録』、(3)バウムガルテン著『形而上学』の翻訳研究を進め、大学紀要にその成果を発表した。すべて本邦初訳である。特に(1)の文献については今年の研究成果により完訳を果たすことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画においては、1、ドゥンス・スコトゥスの翻訳研究を進めること(上記「研究実績の概要」の3の(2)に対応)、2、トマスの天使論において個体化の原理という概念を分析すること(上記「研究実績の概要」の1の(1)に対応)、3、個体化の原理という概念に関するトマスとボナヴェントゥラの比較研究(上記「研究実績の概要」の1の(3)および(4)に対応)、4、西洋中世哲学における天使論そのものの分析(上記「研究実績の概要」の2の(2)と3の(1)に対応)を予定していた。1に関しては『「命題集」講義録』の該当箇所すべての翻訳が完了しているわけではないこと、そして『「命題集」講義録』以外の著作の翻訳研究には着手していないことが問題点として残るが、2、3、4に関しては当初の研究実施計画の実現を達成することができた。加えて、上記の「研究実績の概要」における1の(2)、2の(1)、3の(3)の研究を行うことができた。よって、全体としては研究の進捗状況がおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
スコトゥス著『「命題集」講義録』、それとは別の著作である『形而上学問題集』における個体化の原理に関する箇所の翻訳研究を、次年度以降の研究に支障がない範囲で可能な限り進めていく。
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