1、個体化論の分析としては、中世ヨーロッパのフランシスコ会士ペトルス・ヨハニス・オリヴィに注目して、彼の個体をめぐる議論がもつ哲学的な意義を追求した。主著『命題集問題集』に加えて、『任意討論集』をも分析の対象とした。 2、天使論および天体論の分析としては、(1)近世のイエズス会士フランシスコ・スアレスの天使論に焦点を当てて、天使の種に関する彼の思想的立場を分析するとともに、天使論という議論領域に対する彼の知的態度についても分析を行った。(2)中世のドミニコ会士トマス・アクィナスの天使論と天体論に同時に焦点を当てて、種に関する彼の理論を体系的に理解する可能性を提示した。 3、世界の永遠性論の分析としては、フランシスコ会士ジョン・ペッカムの討論集『世界の永遠性に関する問題集』に焦点を当てて、彼の議論がもつ哲学的な意義を追求した。普遍や個物を時間のなかで捉える視点について多くの知見を得ることができた。 4、翻訳研究として、(1)トマス・アクィナス著『「魂について」註解』第三巻第三章~第五章、(2)ヨハネス・ドゥンス・スコトゥス著『「命題集」講義録(レクトゥラ)』第二巻第三区分第一部第二問題~第三問題、(3)ペトルス・ヨハニス・オリヴィ著『哲学者たちの著書を読み通すことについて』、(4)ジョン・ペッカム著『世界の永遠性に関する問題集』第一問題の翻訳研究を進め、大学紀要にその成果を発表した。すべて本邦初訳である。
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