研究課題
主竜類(ワニ類・恐竜類・鳥類)の繁殖方法の変遷を探るため,平成29年度は主として,3つの研究テーマのうちの一つ(「鳥類に近縁な獣脚類恐竜の大型化と営巣行動の変化」)を重点的に取り組んだ.また,別のテーマ(「多変量解析を用いた繁殖戦略の進化史推定」)のデータ収集を進めた.前者の研究テーマに関して,標本が豊富で,小型種から大型種まで発見されているオヴィラプトロサウルス類恐竜に焦点を当てて研究を行った.中国から産出したオヴィラプトロサウルス類の卵・巣化石標本の形態や微細構造を分析し,営巣方法の復元を試みた.その結果,小型種と大型種では巣の形態に違いがあり,営巣時,体サイズに合わせた適応があったと推測できる.これまで,大型獣脚類恐竜は,その重い体重ゆえに抱卵できないと考えられていたが,本研究により,大型種でも営巣様式を工夫することで,抱卵できる可能性が示された.本研究は現在,論文を投稿中である.また,後者の研究テーマに関して,平成29年度は,主竜類の卵サイズのデータ収集を行った.相対的な卵のサイズは繁殖に関わる重要な形質であるため,主竜類の繁殖戦略の進化史解明には必要不可欠な要素である.様々な系統の主竜類の卵サイズを推定するため,北米・アジアの博物館を主として標本の計測を行った.卵化石が発見されていない恐竜のグループに関しては,骨格標本を使って卵サイズを推定する手法を現在開発中である.本研究により,多様な恐竜類の卵サイズが明らかになりつつある.
2: おおむね順調に進展している
平成29年度は,3つの研究テーマのうち,一つ目の研究をほぼ完了することができた.該当研究は現在,論文を投稿中である.また,同時に進めていた別の研究テーマに関しても,今後さらなる標本調査・分析が必要であるものの,良好な成果が得られつつある.本研究に関しては次年度以降の完了を目指している.
次年度以降は,現在着手している研究(「多変量解析を用いた繁殖戦略の進化史推定」)のデータ収集・分析を完了させ,研究を完成させることが目標となる.具体的には,北米や南米,そしてアジアでの標本調査が中心となる.さらに,3つのテーマのうちの残りの一つも着手し始める予定である.このテーマでは,現生種を含め,主竜類の胚骨格標本の微細構造を観察する予定である.
(一般向け雑誌への投稿)田中康平. 2017. 卵化石から探る恐竜の営巣方法. 現代思想, 45: 159-167.(一般講演)田中康平. 2017. 演題「恐竜たまごの玉子焼きは何人前か」,名古屋大学博物館公開シンポジウム「最新研究でよみがえる古生物・古人類のくらし」; 田中康平. 2018. 演題「世界最大の恐竜卵を探せ!」,北海道大学総合博物館シンポジウム「絶滅動物化石の最新研究2018」
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件)
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