研究課題/領域番号 |
17J00236
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
貴嶋 紗久 筑波大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | アクチン / アイソフォーム / 細胞骨格 / アクチン結合タンパク質 |
研究実績の概要 |
高等植物は複数のアクチン遺伝子 (アイソフォーム) を有するが、それぞれのアクチンアイソフォームが細胞内でどのように働いているのかよく分かっていない。H29年度は、正常な植物細胞内におけるアクチンアイソフォームの局在解析を行い、異なるアクチンアイソフォームが細胞内でどのように重合し、フィラメントを形成しているのかを明らかにすることを目的とした。 本研究では植物の体細胞組織で発現量の多いACT2とACT7の2種類のアクチンアイソフォームの局在解析を行った。N. benthamianaの葉を用いて、海綿状組織と表皮細胞における局在を比較した。海綿状組織ではACT2とACT7がそれぞれフィラメント上にドット状に局在する様子が観察された。一方、表皮細胞ではACT2とACT7が全く異なるフィラメントに取り込まれている様子が観察された。この結果は表皮細胞においてACT2とACT7が異なる機能を果たしていることを強く示唆するものである。また、組織によってアクチンアイソフォームの重合パターンが異なることは、植物細胞内のアクチンの機能とアクチンアイソフォームの関係を理解する上で非常に重要な知見である。 次に、アクチンアイソフォームとアクチン結合タンパク質の局在について理解を深めるために、植物細胞内のアクチンフィラメント観察に広く用いられているアクチン結合ドメイン (Lifeact, Talin ABD) との局在を比較した。その結果、2つのアクチン結合ドメインはACT2とACT7を均一にラベルしない様子が観察された。特に、LifeactはACT7のフィラメントをほとんどラベルした一方、ACT2のフィラメントをラベルしなかった。この結果は、アクチンのアイソフォームがアクチン結合タンパク質の結合に影響を与えるという、従来とは異なるアクチン結合タンパク質の局在機構の存在を示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H29年度中に異なるアクチンアイソフォームの局在、アクチン結合タンパク質との局在を観察するための実験系を確立することができた。この実験系を用いて、異なるアクチンアイソフォームが植物組織によってユニークなフィラメントを形成していることが明らかとなった。特に、葉の表皮細胞でACT2とACT7の局在が異なっていたことは、アイソフォームによって機能が異なる可能性が期待され、H30年度に計画したアクチンアイソフォームノックアウトラインの解析につながるものである。また、アクチン結合タンパク質由来のアクチン結合ドメインの局在もアクチンアイソフォームによって異なっている様子が観察された。この観察結果について原因を調べるためにin vitroで結合実験を行い、考察を行うことができた。 また、H30年度へ向けてHopWI発現コンストラクトの作成や蛍光タンパク質融合アクチン発現株の樹立など、おおむね計画通り研究を進めることができている。以上の結果、本研究課題はおおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度は、アクチンアイソフォームを区別して作用することの示唆されているP. syringae由来のエフェクターHopWIに着目し、植物免疫応答に関与するアクチンの機能を解明することを目的とする。 H29年度に表皮細胞においてACT2とACT7の局在が異なっていることが明らかとなったため、HopWIと各アクチンアイソフォームの局在解析に関しては表皮細胞に着目して解析を進めることを計画している。また、アクチン結合ドメインの局在も表皮細胞で異なっていたことから、HopWI以外のアクチン結合タンパク質に関してもアクチンアイソフォームとの局在解析を進める。並行して、葉以外の様々な組織におけるACT2とACT7の局在や形成されるフィラメントの観察を目指し、蛍光タンパク質融合アクチン発現株の樹立に取り組む。H29年度中にすでに蛍光タンパク質融合アクチン発現株を樹立していが、この株はバックグラウンドの蛍光が強いという問題があったためH30年度はまず観察方法の確立を目指す。 アクチンアイソフォームと植物免疫応答の関連について明らかにするために、ACT2とACT7のノックアウトラインの病原応答を比較する予定である。まず、ACT2とACT7のノックアウトラインを樹立した後、HopWIを有する (あるいは有さない) P. syringaeを感染させ、菌の増殖速度やエンドサイトーシス活性を比較する。ノックアウトラインの解析に加えて、HopWI耐性のWs株もコントロールとして用いる。また、並行してアクチンに作用する薬剤を用いてアクチンのどのような機能が免疫応答に重要であるかについて考察を行う。
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