研究課題
本年度は、「細胞膜Bleb の形成・退縮を規定する分子の制御メカニズムの解明(研究①)」と、「Bleb 形成・退縮に関わる新規分子の機能解析(研究②)」を中心に研究を行った。研究①について、私はこれまでに、Rnd3とRhoAの相互拮抗的な性質がBlebの形成・退縮サイクルの制御に必要であることを明らかにしている。本年度は、この相互拮抗作用がBlebの形成・退縮制御において中心的に機能していることを示すため、これらの分子ネットワークに基づいて数理モデルを構築し、Blebの挙動や各分子の活性化レベルのシミュレーションを行った。その結果、数理モデルによりBlebのダイナミクスを記述することができ、Rnd3とRhoAの相互拮抗的なフィードバック機構がBlebの制御において中心的な役割を果たしていることが示唆された。さらに、アポトーシス時のBlebにおいても、RhoAとRnd3によるフィードバック機構が普遍的に機能していることを見出した。また、アポトーシス時のBlebにおいては、RhoA-Rnd3による制御に加えて、アクチン重合を促進するROCK1や、形質膜の脂質を移動させるスクランブラーゼであるXkr8がカスパーゼにより活性化されることにより、Blebの経時的なダイナミクスの変化が引き起こされていることが分かった。以上の知見を論文としてまとめ、今年度Molecular Biology of the Cell誌にアクセプトされた。研究②について、Bleb拡大期にのみBleb細胞質内へ選択的に濃縮するシグナル伝達分子の機能解析を引き続き行った。その結果、拡大期にカルシウムイオンがBleb内へ選択的に濃縮しており、それによりBlebの拡張期において、細胞の急激な変形を支える細胞質の流動性の変化を生み出していることを見出した。この知見に関しては、現在学術誌に投稿中である。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Molecular Biology of the Cell
巻: Vol. 31, No. 8 ページ: 833-844
10.1091/mbc.E19-12-0691