本研究は高水分で取り扱い難い廃棄物系バイオマスを,持続的かつ省エネルギーな方法でバイオ炭へと変換し,廃棄物系バイオマスの資源化,エネルギー化に資することを目指し行われた。ここでは乳牛ふんをモデル材料として(1)100℃以下でのバイオ炭製造,さらには(2)300℃以上に至る自己発熱反応を利用したバイオ炭製造技術の提案についてそれぞれ検討した。
(1)100℃以下でのバイオ炭製造 90℃での低温酸化プロセスを用いて乳牛ふんの酸化分解を進め,得られた試料の元素分析(CHNO)および高位発熱量(HHV)測定を行った。炭素含有率およびHHVは当初想定していたような大幅な増加は認められなかったものの,回収固形物の元素組成は泥炭に似た組成を有しており,従来の半炭化(200-300℃)や炭化(400℃以上)よりも極めて低い温度域で,バイオマスの改質化を達成できることを示した。 (2)自己発熱反応を利用したバイオ炭製造技術の提案 上述の100℃以下での酸化反応を進めるためには,炭化プロセスには不要と考えられてきた水分が重要な役割を担っていることを前年度までに明らかにした。この知見はバイオマスと酸素分子が反応できる状態,すなわち適度な水分状態に保たれたバイオマスに空気(酸素)を供給することで,バイオマスの自然発火に至るような酸化反応を常温付近から引き起こすことが可能という新たな仮説に繋がった。この仮説について検証を進めたところ,湿潤状態の乳牛ふんを加圧環境におき,空気を連続供給することで300℃以上に至る自己発熱反応が90℃付近から誘発されることを明らかにした。このメカニズムを利用して作成された乳牛ふん由来のバイオ炭は褐炭と同等の元素組成を有していた。
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