平成31年度/令和1年度の研究活動では、日本学術振興会に提出済みの研究計画に沿って、音声聴取者が「時間配列の崩れた音声」を第一言語・第二言語で聞いた際に、どのように「音響的に劣化した音声」を知覚上で処理・理解するのかについて考察した。1つ目の実験では、英語の第二言語習得者(第一言語:日本語、第二言語:英語)に「音響的に劣化した英語音声(第二言語)」を聞いてもらった。その際、音響的に劣化した「摩擦音の多い有意味語・無意味語」と「閉鎖音の多い有意味語・無意味語」を聞いてもらった。音声を劣化させる処理としては、音声信号を音声信号の開始地点から一定の時間間隔(例:50 ms)ごとに区切り、それぞれの区間を時間軸上で反転させた「時間反転音声」を作成した。実験の結果、英語の第二言語習得者は「有意味語の時間反転音声(英語)」を「無意味語の時間反転音声(英語)」よりも理解し、そこに有意差も見られた。一方で、英語の第二言語習得者は「摩擦音の多い時間反転音声(英語)」を「閉鎖音の多い時間反転音声(英語)」よりも理解したが、そこに有意差は見られなかった。2つ目の実験では、英語の第二言語習得者(第一言語:日本語、第二言語:英語)に「音響的に劣化した日本語音声(第一言語)」を聞いてもらった。その際、音響的に劣化した「摩擦音の多い有意味語・無意味語」と「閉鎖音の多い有意味語・無意味語」を聞いてもらった。音声を劣化させる処理としては、「時間反転音声」を作成した。実験の結果、英語の第二言語習得者(母語:日本語)は、「有意味語の時間反転音声(日本語)」を「無意味語の時間反転音声(日本語)」よりも理解し、そこに有意差も見られた。加えて、「摩擦音の多い時間反転音声(日本語)」を「閉鎖音の多い時間反転音声(日本語)」よりも理解し、そこに有意差も見られた。
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