研究課題/領域番号 |
17J00302
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小長谷 圭志 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 高強度テラヘルツ光 / タンパク質 / 反応 / 蛍光測定 / 誘電特性 / 温度効果 |
研究実績の概要 |
本研究は、THz光照射によるタンパク質機能制御の可能性を検討することを目的としている。今年度、外部機関で実施する高強度THz光源による照射実験については、当該機関の施設利用上の都合により当初の計画の全てを実施することは困難であると判断した。そのため、THz光とタンパク質との相互作用を理解するための実験について進めた。まず、THz光とタンパク質との相互作用を理解するための蛍光測定に着手した。タンパク質分子の回転運動がTHz光により影響を受けるとすると、蛍光標識したタンパク質の蛍光異方性が回転運動の有効な指標となる。分光蛍光光度計、偏光子を用いて簡易な実験系を試作し、THz光照射系と組み合わせる前の系の妥当性について評価した。モデルとして、蛍光分子としては吸収係数、蛍光量子効率や蛍光寿命がよく知られているローダミンBを用いた。メチルセルロース濃度依存性を調べたところ、0%から0.50%まで濃度が上昇すると、異方性は増加した。また温度依存性を調べたところ、10°Cから30°Cにかけて異方性は減少した。これらの結果はローダミンBの回転がメチルセルロース濃度の上昇に伴い遅くなっていること、また温度の上昇に伴い速くなっていることから説明できた。今後、異方性の絶対値については装置関数による補正が必要であるものの、相対的な値は評価できる系が構築できた。 また、THz光照射領域が微小な条件下でのタンパク質機能・構造を評価するため、蛍光顕微鏡による蛍光強度の定量を試みたが、蛍光性ビース濃度と蛍光強度の相関性が安定せず、改良が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タンパク質への高強度THz光照射の実験に関して、外部機関の都合により当初の予定の全てを実施することは困難であった。一方、THz光とタンパク質との相互作用の理解のための実験については最終年度の計画を前倒しして進めることができた。蛍光測定により、THz光照射下におけるタンパク質の回転運動を評価するための実験系を試作した。また、微小領域におけるタンパク質の反応を評価するため、照射実験系に組み込む蛍光顕微鏡一体型反応定量系も試作した。タンパク質との誘電相互作用予測のための、種々の生体高分子の誘電測定も種類を増やすことができ、溶液系での水の寄与の大きさや高分子材料における誘電特性の不均一性から照射影響の予測を行えた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの研究内容を一層深めつつ、前年度の計画を急ぎ実施する。前年度に引き続き、タンパク質や生体高分子の誘電測定を続け、種々の分子についてTHz照射影響について検討する。また、THz波照射の条件(周波数、強度、照射時間)を変えた照射影響の違いや、THz光照射下におけるタンパク質運動性の測定により照射影響の機構についても知見を深める。
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