本年度は、当初の計画に基づき以下の三つの課題に取り組んだ。 1、一次史料の収集・分析。昨年度に引き続き、宮内庁宮内公文書館、国立国会図書館憲政資料室、小林記念林業文献センターの所蔵史料について収集・分析を行った。またそれと並行して、これまでやや遅れていた地方の文書館等における史料調査を積極的に行った。未だ本格的な分析に着手できていない史料群も多いが、今後の分析によって新たな知見の発見が期待される。 2、研究成果の公表。今年度は論文を3本執筆した。第一に、2018年4月のメトロポリタン史学会大会における報告「第一次世界大戦後の近代天皇制―研究史の整理と方法の提起」について、大幅な加筆修正を行った上で『メトロポリタン史学』(14号、2018年12月)において発表した。この論文は近代天皇制研究について研究史をレビューしつつ、自身の分析視角について改めて考察したものである。第二に、論文「皇室における御料農地経営の展開―1889~1918年」を『日本史研究』(680号、2019年4月)において発表した。この論文は明治中期以降における御料農地経営の展開過程と、1918年における処分方針の決定過程について分析したものである。大正後期以降に本格化していく御料地処分政策について、その初発の論理を解明し得たことは、本採択課題を遂行する上で大きな意味があると考えている。第三に、論文「皇室、旧藩主家、小田原町、地域住民―小田原城址地をめぐる所有と利用の関係史」が、河西秀哉編『近現代天皇制と地域社会』(仮題)(吉田書店、2019年公刊予定)に掲載される見込みとなった。この論文は、小田原の都市形成過程における御料地払い下げ問題について解明したものである。 3、単著の原稿執筆。本採択課題の成果およびこれまでの自身の研究を一冊の単著にまとめる作業に着手した。
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