研究3年目である本年度は、前年度の結果をもとにして太陽光を利用した高アンモニア態窒素含有の有機性廃棄物の嫌気性発酵システムを開発された。そのため、以下の3点を軸として研究を進めてきた。 (1)最適な光量子を用いた高アンモニア態窒素を含有する培地を基質とした光メタン発酵の長期運転効果を確認するために連続発酵を行った。水理学的滞留時間と有機負荷率の変化にも関わらず、最適な光量子条件を用いた発酵プロセスでは、最高のメタン生成量が得られ、暗条件に比べ2.7倍も高かった。連続運転を実施することによって、アンモニア阻害抑制条件で最適な光量子範囲を用いたメタン発酵の促進効果が確認でき、実用化の可能性が示唆された。 (2) 実の太陽光を利用できる発酵プロセスを開発するため、太陽光と同じ波長範囲の人工太陽光を光源とした阻害軽減への効果を検討した。その結果、UVカット人工太陽光灯で照射した場合、白熱灯を光源とした光メタン発酵に比べ、メタン生産量に有意の差が生じなかった。将来太陽光はメタン発酵の照射光源として利用でき、嫌気性発酵におけるアンモニア阻害の抑制できることによって畜産廃棄物の資源循環と環境浄化の実現が可能になる。 (3)トータルシステムを構築するための全体システムに対しての総合評価を行った。その結果により、太陽光照射を光源として照射することで、省エネルギー型光メタン発酵システムのアンモニア阻害の抑制効果とともに経済効果も期待できる。 以上の結果より、適切な光量子範囲を用いることで、太陽光を利用した高アンモニア態窒素含有の高効率な省エネルギー型メタン発酵システムの構築が可能になった。また、太陽光を利用したメタン発酵において、畜産廃棄物有効処理、環境負荷の軽減、エネルギー回収率向上等効果を認められ、循環型社会形成上に革新技術として活用できることが期待される。
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