研究課題/領域番号 |
17J00359
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
加藤 睦也 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
キーワード | 偏微分方程式 / 擬微分作用素 / フーリエマルチプライヤー / モジュレーション空間 |
研究実績の概要 |
(1)ヘルマンダー・クラスの擬微分作用素の有界性について考えた.この有界性はこれまでにソボレフ空間やベゾフ空間,モジュレーション空間などにおいて数多くの研究が行われている.ここでは特にα-モジュレーション空間上での有界性を考えた.α-モジュレーション空間はベゾフ空間とモジュレーション空間とを結び付けることを目的として導入された関数空間である.この問題は,既にいくつかの結果が知られているものの,妥当とされるヘルマンダー・クラスまでは到達されていない.しかし,本研究によって妥当とされるクラスまで到達することができた. (2)シュレディンガー作用素の有界性について考えた.この作用素は線形シュレディンガー方程式から導出されるものであり,これまでに数多くの関数空間上でその有界性が研究されてきた.ここでは特にモジュレーション空間の類似物であるウィーナー・アマルガム空間上で考えた.シュレディンガー作用素がこの空間上で有界となるための必要十分条件は,臨界点を除いて既に知られていた.本研究でその臨界点について考え,必要十分条件の最適性を示した. (3)非線形作用について考えた.具体的には,『(*)関数fがある関数空間に属すとき, 合成関数F(f)も再び同じ関数空間に属す』かどうかについて考えた.例えばF(f)=f^2のときには,関数空間がバナッハ代数であればこの主張が正しいことはよく知られている.このことから,Fがある種の解析性を持っており,さらに関数空間がバナッハ代数であれば主張(*)が正しいことが分かる.既存の結果ではより一般的なFに関してもバナッハ代数となるソボレフ空間において主張(*)が正しいことが示された.本研究では,この事実がモジュレーション空間においても同様に成り立つことを示した. (1)(2)は冨田直人氏(大阪大学),(3)は杉本充氏(名古屋大学),冨田直人氏との共同研究である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究成果は当初の課題である分散型方程式に関する研究とは一見離れているように思える.しかし,さまざまな調和解析や実解析の手法を学ぶことは今後の研究の進展に好影響をもたらすであろう.そのため,広いところから見れば順調に進展していると判断している.
|
今後の研究の推進方策 |
これまでは特に線形の擬微分作用素を扱っていたが,上記結果(1)の発展として双線形や多重線形の擬微分作用素に対しても同様の結果が得られるのかを考察したい. また,Benyi-OkoudjouやMannaの結果をもとに,上記結果(3)の応用として,べき型非線形項の分散型方程式に対しても時間大域解が得られるのかを考察したい. 今後はモジュレーション空間に加えてソボレフ空間や重み付き空間などにおける研究も行っていきたいと考えている.
|