研究実績の概要 |
双線形擬微分作用素のルベーグ空間における有界性について考えた.擬微分作用素とは,微分作用素を一般化した作用素である.もう少し詳しく述べると,微分作用素はフーリエ変換を通して眺めると,周波数変数に関する多項式が現れる.その多項式を空間変数にも依存する関数へと一般化したものが擬微分作用素である(その一般化した関数をシンボルと呼ぶ).双線形擬微分作用素は,その擬微分作用素を二つの関数の積へと作用させられるように自然に拡張したもので,Coifman-Meyerによって偏微分方程式論へ応用するために導入された. 本研究では,シンボルがヘルマンダーのS_{0,0}型クラスに属する場合に,その双線形擬微分作用素は直積空間L^2×L^2から局所ハーディー空間 h^1 への有界作用素となる,という既存結果に対して,写り先の空間,シンボルクラス,シンボルの可微分性の3つの観点において,以下のような拡張を行った. 1.写り先の空間:これまで,双線形擬微分作用素の有界性では,元の空間と写り先の空間との間にはヘルダーの不等式に現れる指数の関係性を仮定することが多かった.ここでは,L^2×L^2から指数が2以下のルベーグ空間もしくは局所ハーディー空間へ写ることを示し,必ずしもその関係性が必要ではないことを示した. 2.シンボルクラス:これまで,ヘルマンダーのS_{0,0}型クラスに現れるシンボルの挙動を測るための重み関数は,二乗平均の形をしたものであった.ここでは,その重み関数が他の関数(例えば,弱L^p空間に属す関数)であっても上述の有界性が成り立つことを示した. 3.シンボルの可微分性:これまで,有界性を得るためにはシンボルにかなり多くの可微分性を仮定していた.ここでは,各変数に対して多くともn/2程度で十分であることが示された. 本研究は,東京女子大学の宮地晶彦氏,大阪大学の冨田直人氏との共同研究である.
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