本研究の目的は、快楽財/機能財の経済価値判断が処理されている脳領域を明らかにすることである。快楽財とは、感情面(楽しさ等)を理由に購買する商品である。一方で、機能財とは機能面(有用性等)を理由に購買する商品である。しかしながら、快楽財/機能財の経済価値判断の脳領域はわかっていない。さらに、それが意識的・自動的価値判断で異なるかどうかもわかっていない。 オンライン予備実験を行い、快楽財・機能財を選定した。快楽財として主にコミック、機能財として主に実用書を選定した。予備実験で選定した刺激を用いて、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)実験を行った。fMRI実験は、予定通り、東北大学加齢医学研究所ブレインイメージング棟のMRI 装置を使用して行った。 実験参加者は、意識的な経済価値として、MRIの中で快楽財/機能財の支払意思額を回答した。結果として、快楽財/機能財の意識的経済価値は、共に前頭前野腹内側部と線条体で処理されていることがわかった。また、自動的な価値判断を測定するために、実験参加者はMRIの中で、快楽財/機能財の知覚判断(本のタイトル行/人物の合計数を回答)を行った。自動的な価値判断の際には、快楽財の価値が前頭前野腹内側部で処理されていた。なお、この自動的価値の結果は、報酬感受性が高い個人のみ見られた。これらの成果は、生物学的な基盤に立脚した新しい消費者行動理論につながると期待できる。
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