研究実績の概要 |
本年度は申請書に記載した実験内容に従って実験を行った。 ①【CD133の5つのプロモーター活性に対するメトホルミンの影響の検討】HCC細胞株ではP1プロモーター活性が最も高く、メトホルミンもこのP1プロモーター活性を低下させた。さらに、P1プロモーター領域を徐々に短くした欠損変異体プラスミドを用いた解析から、メトホルミンの作用を受けるプロモーター領域の絞り込みに成功した。 ②【メトホルミンによるCD133の発現抑制がAMPKを介するか否かの検討】HCC細胞株にメトホルミンを作用させると同時にAMPKをノックダウン(あるいはAMPK阻害剤を添加)した結果、メトホルミンによるCD133発現抑制が大幅に解除された。この結果から、メトホルミンによるCD133の発現抑制は少なくとも一部はAMPKを介していることが示唆された。 ③【メトホルミンによるがん細胞内の遺伝子発現(主に転写因子)の変化についての網羅的解析】DNAマイクロアレイを用いて、メトホルミンによって発現が変化する遺伝子を網羅的に解析した。発現が変化した遺伝子の中から、①の結果でメトホルミンの作用を受けるP1プロモーター領域に対して結合し得る遺伝子を抽出した。その結果、3つの転写関連因子(遺伝子A,遺伝子B,遺伝子C)を新規候補遺伝子とした。 ④【候補遺伝子の発現がCD133の発現に影響を与えるかどうかの検討】3種類の候補遺伝子をクローニングし、それぞれの発現プラスミドを用いてP1プロモーター活性に与える影響を検討した。その結果、遺伝子Cの過剰発現によってP1プロモーター活性の変化が認められた。一方、遺伝子Aおよび遺伝子Bに関してはP1プロモーター活性に影響を与えなかった。これらの結果から、候補遺伝子CがメトホルミンによるCD133の発現抑制に重要であることが示唆された。
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