研究課題/領域番号 |
17J00449
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
勝部 大樹 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 光触媒 / 非接触原子間力顕微鏡 / 走査トンネル顕微鏡 / パルスレーザー堆積法 / 金属酸化物 / 薄膜 / 表面 |
研究実績の概要 |
本研究は、アナターゼ型TiO2(001)表面における光触媒の反応機構を解明することを目的とした研究である。そのために今年度(平成29年度)は、(1)非接触原子間力顕微鏡(NC-AFM)を用いた表面構造の原子分解能観察とNC-AFM像の表面構造との対応の検討、(2)表面に局在する欠陥の検討、(3)水分子吸着表面の原子分解能観察の3つの研究に取り組んだ。 (1)表面構造をNC-AFMにより、原子分解能で観察することに成功し、大まかに3種類のコントラストのイメージングモードが存在することが分かった。また、これらのイメージングモードにおいて、表面構造との対応を検討することにより、表面構造とコントラストの対応を明らかにすることができた。この成果により、NC-AFMで局所構造の物性や吸着種、吸着サイトを調べるための基礎が整った。 (2)NC-AFMによる原子分解能観察により、表面に局在する欠陥について調べた。これまでの先行研究では、走査トンネル顕微鏡(STM)により、周期列上の点欠陥が報告されていた。しかし、本研究で行った原子分解能NC-AFM観察により、4種類の点欠陥を識別し、STMにより識別することができなかった欠陥を識別することに成功した。 (3)光触媒反応で最も代表的な水分解反応について理解するために、初期吸着過程についてNC-AFMを用いて調べた。これまでの報告では、初期吸着において、(1×4)構造の周期列上に吸着することが報告されていた。しかし、本研究の結果、これまでの報告にはない水分子の吸着サイトを発見することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度(平成29年度)においては、アナターゼ型TiO2(001)の表面を原子分解能で調べる予定であった。しかし、想定より速いペースで実験が進捗したため、次年度(平成30年度)に行う予定であった水分子導入機構の立ち上げと水分子吸着表面の原子分解能観察を前倒しして行うこととなった。 また、表面構造・物性の研究においても、NC-AFMとSTMによる原子分解能観察で多くの新しい知見を得ることができている。以上の状況から、本研究は当初想定していた計画を超えたペースで進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現状、本研究全体で当初予定していた計画のうち、80%ほどの進捗状況であると考えている。今後は水分子吸着表面の更なる高分解能観察を行うことにより、表面の状態を原子レベルで明らかにしていこうと考えている。 また、当初の計画では行う予定になかったが、想定を遥かに超えるペースで進捗しているため、酸素分子との反応についても調べていこうと考えており、アナターゼ型TiO2(001)表面への酸素分子吸着とその表面の原子分解能観察に取り組む予定である。酸素分子導入に関しては試料作製時に酸素ガスを用いていることから、試料作製チャンバーを用いて実験を行う予定である。
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