本研究はアナターゼ型TiO2(001)表面の光触媒の反応機構を解明することを目的とした研究である.本年度は、アナターゼ型TiO2(001)表面の構造・物性を明らかにするために、1.非接触原子間力顕微鏡(NC-AFM)と走査トンネル顕微鏡(STM)の同時測定による局所構造の観察、2.アナターゼ型TiO2(001)表面における水の曝露量に依存した吸着状態の変化の観察の2つの研究に取り組んだ. 1.アナターゼ型TiO2(001)表面の局所構造はNC-AFM像のコントラストや高さプロファイル解析によって識別し、分類することは一部を除き困難であり、局所構造における各モード間のコントラストの相関も不明確で合った.そこで、NC-AFMとSTMの同時測定によるアナターゼ型TiO2(001)表面の原子レベルの観察を行うことにより、表面の吸着種と表面に存在するいくつかの欠陥を識別することに成功した. 2.前年度では行っていなかった水の曝露量による吸着サイトと吸着状態の変化についてNC-AFMとX線光電子分光により調べた. X線光電子分光の結果から、水曝露量に依存して、表面の吸着状態が解離吸着ではなく、分子吸着に変化するといったことはないことが明らかとなった.また、OH結合にいくつかの種類が存在するといったことを示唆する結果を得た. 曝露量を変化させた際の、吸着サイトの変化をNC-AFMにより観察した結果、曝露量が少ない場合においては、OH基はばらばらに存在していたものが、曝露量を増やしていくごとに、OH基が凝集したような構造が増えていくことが観測された.これは、X線光電子分光の結果と合わせて考えると、種類の異なるOH基が現れてきたことを示唆していると考えられる.
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