研究課題
本年度は、研究課題である窒化ガリウム結晶の低歪化(低反り化)に対して取り組んだ。従来、窒化ガリウムを成長させるためには種結晶としてサファイア基板などの異種基板を用いていたため、異種基板上に結晶成長を行うことになり成長時に格子不整合によって結晶反りが発生してしまう。加えて、窒化ガリウム結晶は結晶成長後の冷却過程で、窒化ガリウムとサファイアの熱膨張係数差により発生する応力を受けることによっても結晶反りが発生していた。本研究では、種結晶としてサファイア上に窒化ガリウムを成膜したテンプレートを使用しているが、まず、成長後冷却前にリチウムを溶剤として用い、サファイアを溶解させることで、窒化ガリウムがサファイアより受ける熱応力の発生を抑制し反りを低減させた。さらに、種結晶として用いるテンプレートのサファイア厚を厚くすることで、結晶自体の耐久性を向上させ、成長中に発生する反りも低減した。その結果、これまでのGaN結晶は曲率半径3~4 mの大きな反りを有していたが、本年度の研究によって、曲率半径30 mを超える反りの小さい結晶作製に成功している。また、本手法ではサファイアを溶解させる際に、リチウムを用いているため結晶内にリチウムが不純物として取り込まれてしまうという問題が考えられるが、リチウムの存在しない溶液で再成長を行うことで、成長層にリチウムが拡散しないことがわかった。これは、本結晶が高品質なGaN結晶を量産するための種結晶として十分使用可能であることを示している。本年度ではこれらの成果を国内会議及び国際会議で発表しており、計4件の発表を行った。検討を重なるうちに当初計画していた検討と異なる調査を行ったが、当初の目的である低反り化の目的を達成した。
2: おおむね順調に進展している
本年度の目標は、結晶の低反り化であり、当初予定していた転位の挙動制御は行わなかったが、種結晶のサファイアの厚みが結晶の反りに重大な影響を及ぼしていることを発見し、結果として、これまでの結晶に比べ極めて低反りな窒化ガリウム結晶の作製に成功した。アプローチは異なるが、結果として本年度の目標を達成できたことから、おおむね順調に進展していると評価している。
当初の計画通り、本年度は低反り化という目標を達成したので、次年度以降もおおむね計画通り進める予定である。次年度は、予定通り結晶欠陥の抑制を目標に行う。最近の研究により、デバイスキラーとなる結晶欠陥の評価も進んできているため、キラー欠陥特定にとどまらず、結晶内のキラー欠陥低減を行う予定である。しかしながら、昨年度実験装置の不調等が発生し、昨年度の進捗には影響を及ぼさなかったが、今年度も同様の懸念があるため、装置メンテナンスにも時間を割く予定である。
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