研究1.有限離散空間上の準モンテカルロ法: 準モンテカルロ法は、通常は単位立方体上の関数に対する数値積分のアルゴリズムである。しかし、積分誤差の解析に用いられるフーリエ解析やウォルシュ解析による関数空間の展開を有限で打ち切ることを考えた場合、有限群上の積分を考えることは自然である。とくに格子やデジタルネットは有限群の部分群を考えることに相当する。本年度は、群という設定も取り払い、有限離散空間上の準モンテカルロ法を研究した。予備的な結果として、古典的なKoksma-Hlawka不等式と関数空間の一意的な展開との間に密接な関係があることを把握した。この結果は、Koksma-Hlawka不等式を新たな視点から再構築することにつながる結果だと期待している。また将来的には、グラフ上での数値積分への応用や、多様な超一様性の尺度に対応する数値積分などへの発展が期待される。 研究2.総説論文の執筆: 高次元数値積分アルゴリズムの一つ、higher order digital net(高階デジタルネット)を用いた準モンテカルロ法に関する英文総説論文を、東京大学の合田隆准教授とともに執筆した。本論文は、これまでの高階デジタルネットに関する研究をウォルシュ解析の視点から体系的にまとめあげたものであり、本分野の研究がこれまで以上に活発になることが期待される。本論文は、書籍"Discrepancy Theory"の一部分として出版された。また、準モンテカルロ法に関する和文総説論文の執筆を進めた。
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