研究課題/領域番号 |
17J00472
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今城 峻 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 内部磁気圏内の沿磁力線電流の磁場効果 / 沿磁力線電流の磁気圏-電離圏結合性 / 磁気嵐中の沿磁力線電流とリングカレントの関係 / Pc5の地上-磁気圏伝播の統計解析 |
研究実績の概要 |
本年度は当初計画していたものとしてはウェッジ型電流の3次元モデリングとQZS-1衛星とERG衛星の磁場データの解析を行った。 磁力線の引き延ばしを考慮したcompressed dipoleに沿った電流が作る磁場変動の3次元分布を計算し、磁気赤道面から離れることでどの程度磁場が変化するかを調べた。その結果赤道から20-30°離れると動径成分と東西成分が主磁場成分の変動を上回ることが分かった。また磁気緯度30°程度になると内部磁気圏では直接FACと交差しうるため、非常に大きな磁場変動が受かる可能性を示唆した。 QZS-1準天頂衛星磁場データの較正作業を共同で行い、特に衛星座標変換とオフセット評価方法の提案で主要な役割を果たした。準天頂軌道の電離圏磁力線投影点が長時間同じ場所に毎日留まる利点を生かし、これまで数例の報告しかなかった同一磁力線上地上衛星間でコヒーレントなPc5波動を数百イベント選定することに成功した。これらのイベントの調査から、電離圏スクリーニング効果に伴う偏波回転と振幅減衰を統計的に示すことにが出来た。 ERG衛星磁場データの解析過程で、磁気嵐中において内部磁気圏中で磁場東西成分に現れる大振幅変動を発見した。この磁場変動は磁気投影点近くの低高度衛星の磁場変動と一致しており、沿磁力線電流の交差を捕らえていることを示した。さらに磁場の回転から電流密度を推定し、電流保存則から電離圏高度での電流密度に変換して電離圏高度の電流密度の比較した。両者は近い値をとることから、内部磁気圏から電離圏に掛けての沿磁力線電流の電流結合性が初めて定量的に示された。また、ERG搭載のMEP-iイオンデータからリングカレント電流密度の推定を行った。その結果、リングカレントは沿磁力線電流よりもやや外側に位置しており、それは軸非対称磁場における圧力勾配電流の発散によって説明出来ることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウェッジ型電流が内部磁気圏に作る磁場変動のモデリングは予定通り完了した。QZS-1衛星ではデータの性質上Pi2波動をみるのは困難であったが、Pc5波動は多く検出でき、地上観測点との共役性を生かした解析を行うことが出来た。ERG衛星では当初はPi2波動の赤道から離れた場合の違いや、電場を含めた解析を予定していたが、東西磁場の大振幅の変動という興味深い発見がなされたため、この現象の解析を優先して行った。電離圏高度の衛星と磁気的共役が取れたこと、プラズマ圧観測からのリングカレントの導出が出来たことで、よりインパクトのある結果が得られた。この成果でJpGU学会で口頭発表が決まっており、またERG衛星初期結果のGeophysical Research Letter誌特集号に原稿を投稿済みである。上記のように一部予定と異なる解析を行っているが、全体としては当初の計画からの予想やや上回る成果が出ている。
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今後の研究の推進方策 |
ERG衛星での沿磁力線電流・リングカレントの解析結果を学会で発信していく。またこの解析を通して、プラズマ圧とそれの励起する電流に関する観点から、磁場の回転と圧力から得られたリングカレントの比較や、磁場を用いた圧力の評価など新たな展開を着想している。解析対象の現象は計画時とは異なるが、内部磁気圏内で大きな部位を占めるリングカレントによる磁場変動を電磁流体力学的近似でどこまで理解出来るかという問題は本課題の目的に概ね即する。 平行してSWARM衛星と地上の磁場を用いたPi2波動のMHD波動・FAC振動の分離の解析も進める。地上と衛星の観測するPi2の偏波角差、振幅差から各伝播モードの寄与度を求める。 またQZS衛星の2,4号機の磁場データの整備が着手段階にあり、これらのQZS衛星を連携させて用いることで同一地方時、動径距離で磁気緯度が異なるというこれまでにない同時観測が出来ることが期待される。すでに行っているPc5波動の解析を発展させ、南北半球同時観測から共鳴モードと節位置を決定したうえで、電離圏スクリーニング効果の検証をモデルとの比較から行う。
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