研究課題/領域番号 |
17J00480
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
齋藤 隆大 筑波大学, 数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 非孤立特異点 / ミルナーファイブレーション / ミルナーモノドロミー / 混合ホッジ構造 / 混合ホッジ加群 |
研究実績の概要 |
非孤立超曲面特異点におけるミルナーファイブレーションの研究を行った. まず第一に,非退化コンビニエントな多項式に対して知れらていたモチビックミルナーファイバーの計算公式を,非退化で非コンビニエントな多項式の場合に一般化した.これを用いることで,非退化な多項式で定義されるミルナーファイバーのコホモロジー群の混合ホッジ構造に対するE-多項式及びその特異点のスペクトラムを,その多項式のニュートン多面体の情報で記述する事ができた. 第二に,非退化な多項式に対し,そのニュートン多面体を用いて“良い固有値”の集合を定義し,“良い固有値”に対しては中間次元以外の次数のミルナーモノドロミーの一般固有空間は消滅している事を示した.この結果の応用として, Varchenkoによるモノドロミーゼータ関数の計算公式から,そのような固有値の重複度の計算をする事が可能になった.また,上述のE-多項式の計算公式から,その固有値に関するミルナーファイバーのコホモロジー群の混合ホッジ構造の(p,q)-数を計算する事が可能になった. 第三に,非退化な多項式で定義される非孤立特異点に対しても,“良い固有値”に対するミルナーモノドロミーの一般固有空間上のウェイトフィルトレーションはモノドロミーフィルトレーションと一致している事を示した.この結果と上述した(p,q)-数の計算を合わせる事でミルナーモノドロミーのジョルダン標準形の“良い固有値”に関する部分を定義多項式のニュートン多面体の情報で記述する事ができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の研究は,非コンビニエントな多項式が定義する超曲面の族の大域的なモノドロミーについての本研究課題申請時以後に得られた結果の証明方法がミルナーモノドロミー(局所的なモノドロミー)の場合にも適用できる事の発見に端を発すものである.これは申請時には想像していなかった研究の発展の方向であった.また,非孤立特異点に対するモノドロミーゼータ関数のVerchenkoによる計算公式がよく知られているにも関わらず,その式から具体的にミルナーモノドロミーの固有値の重複度を計算する事は従来殆ど不可能であった.その意味で,今年度の研究により非孤立特異点の理解に関して大きな進捗があったと考えられる. 上記理由により今年度の研究は当初の計画以上に進展したと言える.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究で定義した“良い性質”を持たないミルナーモノドロミーの固有値について研究を進める.一般にはミルナーモノドロミーの良い性質を持たない固有値についての一般固有空間は中間次元に集中していない場合があり,さらにその上のウェイトフィルトレーションも幾何的にどのような意味が付けられるのかは一般には知られていない.他方,そのような固有値に対しても,ミルナーモノドロミーの一般固有空間に関するE-多項式は,非孤立特異点の幾何的な情報と結びついていると期待できるある種の対称性を持つ多項式の和で表示できる.今後の方針としては,このような観察を用いる事でE-多項式の情報と特異点の情報を比較し,ミルナーファイバーのコホモロジー群における(p,q)-数の幾何的な意味付けを行うことを目標としたい.
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