本年度は4月から10月まで当該科研費を利用してフランスのエコールポリテクニークに滞在し,Claude Sabbah氏と議論を行い,主に二つの研究を行った. 「非孤立特異点のミルナーファイバー・モノドロミーの研究」 ニュートン多面体に関して非退化なn変数複素多項式を考え,複素n次元空間の原点はこの多項式で定義される超曲面の特異点であるとする.これが孤立特異点である場合,ミルナーファイバーの非自明なコホモロジー群は中間次数のみであり,さらにこのコホモロジー群の混合ホッジ構造に関する重みフィルトレーションはミルナーモノドロミーのモノドロミーフィルトレーションである.非孤立特異点に対してこれは一般には成り立たないが,私は前年度までの研究でニュートン多面体から複素数体の有限部分集合を定義し,その集合に属さない固有値に関しては「コホモロジー群の集中」及び「重みフィルトレーションとモノドロミーフィルトレーションの一致」が成立する事を示した.今年度の研究により,この事実の証明が簡略化され,最終的にこれらの結果をまとめた論文がAdvances in Mathematicsに掲載された. 「モノドロミックな混合ホッジ加群のホッジフィルトレーションの研究」 複素1次元空間上の混合ホッジ加群を考える.この下部D-加群がモノドロミックであるとき.このD-加群は自然に有限次元ベクトル空間の直和に分解する.私はこの条件下でホッジフィルトレーション,及び重みフィルトレーションもこの分解に従って直和分解するという事を示した.これを用いてこのD-加群のフーリエ変換上の不確定ホッジフィルトレーションが自然に混合ホッジ加群を定める事を示した.さらにこの結果を複素n次元空間上の混合ホッジ加群に対して拡張した.
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