研究課題/領域番号 |
17J00486
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
久野 義人 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 光格子冷却原子系 / トポロジカル量子物性 / 動的量子相転移 |
研究実績の概要 |
今年度の研究実績として各研究テーマの状況を (I)一次元光格子冷却原子系におけるディラック-フェルミオン系量子シミュレータ構築法の理論的提案を行った。近年の冷却原子系における実験技術を見越して実験家と共同でトポロジカル絶縁体を発現する基本モデルで一次元ウイルソンディラックモデルの構築法についての理論的提案を試み、論文としてまとめ現在、国際論文誌に投稿中である。(II)一次元光超格子ボースハバードモデルのさまざまなトポロジカルモット相について厳密対角化法用いた系統的数値計算によりその光格子超格子の周期構造に応じて様々な高いチャーン数で規定されるトポロジカルモット相を含む大局的相構造を求めた。研究は前年度から行っていた研究の継続的な進展であり本研究成果を複数の学会で発表した。さらに、論文として国際学術誌に出版した。(III)ボースハバードモデルの動的量子相転移現象とギブル・ズレック機構の検証、今年度は二次元ボースハバードモデルに着目しその超流動相とモット絶縁体相の間での動的量子相転移に注目した。時間発展グッツウィラー法を用いた数値計算によりその動的量子相転移現象を平均場的であるが評価した。特に、その量子相転移間で発現が示唆されるギブル・ズレック機構についてその予言がこの系でも発現するのかについて精査した。これらの結果は共同研究論文としてまとめ、国際学術誌に今年度内に掲載決定になった。(IV)一次元光格子冷却原子トポロジカルポンプ系における不純物効果にについて、所属実験室にて進行中であるトポロジカルポンプ系の物理に関して、特不純物に対する堅牢性に関して理論的側面からの実験データの解釈やそれに準じた数値計算での検証を行った。得られた結果は共同研究者である実験家がシンポジウム・学会等で多くの講演を行い、現在、論文化に向けて検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(I)一次元光格子冷却原子トポロジカルポンプ系における不純物効果については、理想モデルである準周期ポテンシャルを加えたライス・メレモデルがそれと同じ振る舞いを示すかどうか直接数値計算で検証した。ここで厳密対角化法を用いたチャーン数の計算を実行し、その非自明なトポロジカル相の相構造を実験で行われているパラメータとできるだけ擦り合わせたもので検証したところ実験との整合性が得られたため現在、そのまとめを行うことを検討している。この点に関してはおおむね順調に研究が進展している。 一方、相互作用効果については、相互作用下でのトポロジカルポンプについても、他の理論研究者との意見も参考にして現在議論を進めている。また、理論的な側面として、まずは定性的な振る舞いを予想するためハートリーフォック平均場近似を用いた相互作用あるトポロジカルポンプ系の相構造を求め実験家と意見交換を行い、実際の実験に先立ちまずは理論的検証を進めている。平均場近似で現象をほぼ捉えることができるであろうと想定していたが実際には定性的な結果しか得られなかったので他の手法を用いる必要性が出てきた。この点に関してやや遅れている研究の進歩状況である。 (II)一次元光格子冷却原子系におけるディラック-フェルミオン系量子シミュレータ構築法の理論的提案を行うことが実験家とでき、さらに論文を執筆し現在投稿中であるため、順調に研究が進展しているといえる。(III)ボースハバードモデルの動的量子相転移現象とギブル・ズレック機構の検証ついては、先行研究の実験データと数値計算の結果を比較した。ここで我々は実験パラメータと合わせた数値計算では実験データと整合性をもつ結果を得たこれらの結果は共同研究論文としてまとめ、国際学術誌に今年度内に掲載決定になった。研究は順調に進歩したと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
(I)一次元光格子冷却原子トポロジカルポンプ系における相互作用については今後研究を推進する必要がある。そこで現在、時間発展一次元量子多体系の数値計算手法として有効であるTEBD法の検討と開発を進めている。この手法において実際の実験系をシミュレートできる計算パッケージを構築することが必要である。また、同様の理論研究を行っている理論研究者との議論を通して、まずはその一般的な物理的特性の把握を詳細に行い研究を推進する予定である。 (II)一次元光格子冷却原子系におけるディラック-フェルミオン系量子シミュレータ構築法の理論的提案を行うことが実験家とできた。その研究の過程で、この量子シミュレータの拡張として相互作用を加えることを想定するとモデルは高エネルギー、格子ゲージ理論で重要なモデルである格子グロス-ネベウモデルの量子シミュレータにつながる可能性も見いだした、そこで量子物性現象の解釈や動的側面を探っている。この提案において実際の実験系で重要な問題となるレーザーによる、ランタノイド原子系の用いた系の熱化が少ないようなレーザー励起ホッピング法を用いた新しい人工磁場系の量子シミュレータの構築を目指す。。(III)ボースハバードモデルの動的量子相転移現象の新たな進展として人工磁場中の動的量子相転移について研究を推進する。ここでは人工磁場によって励起されるトポロジカル量子渦生成のダイナミクスやその生成数の長時間発展の振る舞いなどを孤立量子系のダイナミクスの解明という観点から研究を進める方策である。この研究を通して問題になるのは定量的に時間発展を評価する物理量の選定が定まっていないので、海外の研究者と連絡を取りつつ、より物理的に興味深い物理量を選択する。
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