研究課題/領域番号 |
17J00490
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
吉田 大祐 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 宇宙論 / 暗黒物質 / 余剰次元 / ブラックホール / 重力波 / 微分形式場 / 準固有振動 / 安定性 |
研究実績の概要 |
当該年度は、主に2つの研究を進めた。 1つ目は、昨年度の実績である「余剰次元の痕跡であるアクシオン暗黒物質による、重力波・電磁波の共鳴現象」に関連し、この共鳴現象を包含する形で、アクシオン暗黒物質が重力波に生じる一般的な性質について研究を進めた。しかし、この研究成果は、まだ論文としてまとめることができていない。次年度の出版を計画している。 2つ目は、余剰次元に関連するテーマとして、ブラックホール周りでの微分形式場の安定性について研究を行なった。先行研究において、球対称ブラックホール上では、スカラー場・電磁場・重力場・ディラック場の性質が知られていた。しかし、微分形式場と呼ばれるスカラー場・ベクトル場を包含する一般的な反対称テンソル場の、ブラックホール上での性質は未知であった。本研究では、高次元時空において一般的な場である微分形式場についての性質を明らかにするべく、対称性の良い球対称ブラックホール周りでの微分形式場に注目した。そこで、微分形式場に対して、適切なゲージ固定方法とマスター方程式と呼ばれるシュレーディンガー方程式の形をした2階の線形常微分方程式を与えた。一般に、場の性質はマスター方程式中のポテンシャルによって記述される。このポテンシャルについて調べることで、任意次元の球対称ブラックホール場で、任意階の微分形式場が安定であることを示した。また、マスター方程式によって、微分形式場の準固有振動数についてもN次のWKB近似が応用できる領域において計算することができた。本研究成果は論文として執筆し、Physical Review Dに出版された。今後、成果発表を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
理由としては、 ・初年度の時点で当初の研究題目以上に効率的な方法を提示できた点 ・初年度の研究成果を包含する形で拡張している点 ・高次元時空において球対称ブラックホール上において任意階の微分形式場の一般的な性質を示した点 の3つが挙げられ、高次元時空の場の性質・余剰次元の探査方法についての研究が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、今年度の研究実績の概要で挙げた1つ目の研究を完了し、論文として執筆することが必要である。また、初年度での手法を実験データへ適用し、その評価をしていないため、これを進める必要がある。2つ目で挙げた研究内容に関しては、仮定である球対称ブラックホールから、Kerrブラックホールのような軸対称ブラックホールへの拡張が挙げられる。近年、LuninによるKerr時空上のベクトル場についての画期的な手法が見つけられ、これらの応用が可能であるか、検討中である。
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