研究実績の概要 |
インフルエンザウイルスのゲノムパッケージングは、感染後期において宿主細胞の核内で新規合成された8種類のゲノムRNPが形質膜直下に輸送され、インフルエンザウイルス由来のタンパク質HA, NA, M1, M2が集積したエンベロープに包まれて子孫ウイルス粒子が形成される際に起こる。膜貫通型タンパク質M2の細胞質領域はRNPが子孫ウイルス粒子に取り込まれる過程で重要な役割を担うと考えられているが、その詳細な分子機構やM2とRNPの相互作用機構については未だ解明されていない。そこで、AFM(原子間力顕微鏡)による解析と生化学的手法を組み合わせ、ゲノムパッケージングにおけるM2とRNPの分子レベルでの相互作用機構の解明を目的とした研究を行った。この研究を通して感染後期におけるM2タンパク質の機能を解析し、インフルエンザウイルスのゲノムパッケージングにおけるM2タンパク質の役割の解明を試みた。 1年目は「M2細胞質領域変異の探索」を主な課題とした。先行研究を見直し、ゲノムパッケージングへの関与が示唆されたM2細胞質領域変異をいくつか発見したため、これらの探索を進めた。その結果、M2細胞質領域の末端から22アミノ酸を欠失させた変異体ウイルスにおいて、先行研究と同様にウイルスの力価が大きく低下することを確認した。また、蛍光タンパク質を付加したM2変異体を発現するウイルスの作製や、M2細胞質領域と宿主因子との相互作用解析等、様々な手法を用いてM2細胞質領域の機能を解析するための実験系の構築を積極的に進めた。
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