研究課題/領域番号 |
17J00544
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
茂藤 健太 筑波大学, 数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 薄膜 / 太陽電池 / 固相成長 / ゲルマニウムスズ |
研究実績の概要 |
本年度は、パルスレーザーアニール法を用いたGeSn薄膜の結晶成長において、レーザー照射後の冷却速度の向上によるSn析出の抑制を検討してきた。しかし、薄膜溶融に伴う表面凹凸(RMS>10 nm)を抑制することが原理的に困難であると判明した。そこで、固相成長法に研究を展開した。固相成長法は、非晶質膜を基板上に堆積し、熱処理を施すことで固相にて結晶化を誘起する手法であり、平坦な膜が得られることが期待される。固相成長の前駆体となるGeSn薄膜をX線反射率法およびラマン分光法により評価した。GeSn前駆体は堆積温度の上昇と共に高密度化し、結晶の密度に漸近した。さらに堆積温度を上昇させると、結晶核の発生が確認された。また、Sn組成の増加に伴い、前駆体密度が増加し、さらなるSn組成の増加により結晶核が発生した。 これらを窒素雰囲気中で熱処理し、固相成長を誘起した。成長層の結晶粒径を電子線後方散乱回折法、格子置換Sn組成をラマン分光法により評価したところ、(1)前駆体が高密度かつ非晶質であること、(2)Sn析出を起こさない程度のSn添加が大粒径結晶を得るために重要であることが判明した。さらに試料表面を原子間力顕微鏡法により評価したところ、非常に良好な平坦性(RMS=1 nm)を示した。 電気的特性をホール効果法により評価した。正孔移動度は粒径を必ずしも反映せず、極微量のSn析出が生じるSn組成において正孔移動度380 cm2/Vsを示した。同時に、Sn添加による正孔密度の低減が確認された。GeSnにおける正孔の起源は、膜内の多重空孔であることが知られており、空孔をSnがパッシベーションしたことが示唆される。この移動度は、絶縁体上に500℃以下で低温形成した薄膜の中で最高である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、パルスレーザーアニール法によるGeSnの結晶成長を検討していた。今回、固相成長法に研究を展開し、前駆体形成条件を制御することで従来最高品質のGeSn結晶をガラス上に合成した。
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今後の研究の推進方策 |
GeSn薄膜の更なる高移動度化に向け、現状のキャリア散乱要因をアービンカーブおよびマティーセンの法則から検討したところ、不純物散乱および粒界・界面等の散乱で律速されていることが判明した。今後は、これらの散乱要因の低減を目指し、ポストアニール、膜厚変調等を検討する。
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