平成30年度の研究計画に基づき,物体周りの流れを記述するNavier-Stokes方程式の解析や,表面の粗い固体壁付近の流れの数学解析に取り組んだ.まず,2次元非対称外部領域において,スケール臨界な減衰$O(|x|^{-1})$を持つ小さな旋回流の安定性に関する定量的な研究を行った.前年度までに,旋回流周りの線形化方程式に対する$L^p$-$L^q$評価の導出には成功していたものの,これらは小さな旋回のパラメータに対して特異であった.今年度の研究によって,この特異性と時間減衰の関係を明らかにし,$L^p$-$L^q$評価に対数的な重み関数を導入することで,旋回パラメータに関して一様な評価が得られることを証明した.また,無限に長い3次元円柱の周りを流れる定常ナヴィエ‐ストークス流の安定性を考察した.特に,中心軸方向に一様な2次元旋回流を考え,旋回流が十分小さいという仮定の下で,中心軸方向に周期的な小さい3次元初期擾乱に対する漸近安定性を証明した.さらに,擾乱の長時間挙動に関して,その3次元部分については指数関数的に,2次元部分については代数的にそれぞれ時間減衰することも併せて示した.また,Christophe Prange研究員(CNRS・ボルドー大学)との共同研究において,半空間を微小パラメータで変位・摂動させた領域における,定常ストークス流のパラメータに関する高次展開を考察した.境界における滑り無し境界条件により,境界層の影響を反映した展開を考慮する必要がある.そこで,半空間ストークス流の法線方向への高次展開を基に,境界層補正を導入し,境界付近における高次展開を証明した.本結果は,リプシッツ境界を持つ摂動半空間における定常・非定常ストークス方程式の正則性評価等に応用する予定である.
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