研究実績の概要 |
温度は生体反応に直接影響する環境因子であるため、動物の温度応答に関わるメカニズムの解明は重要な研究テーマである。そこで、温度に対する応答や新しい温度に馴れる分子メカニズムの解明を目指して、線虫C. エレガンスの低温馴化現象を用いて解析を行った。これまでの解析から、世界各地の線虫C. エレガンス多型株の低温馴化を測定したところ、オーストラリア産の株は新しい温度に馴れるのは早いのに対し、ハワイ産の株は遅いことを報告しており、この低温馴化多様性を決定する原因遺伝子の候補が同定されていた。2019年度に行った解析から、この遺伝子は酸素と二酸化炭素を受容するニューロンで発現していた。そこで、このニューロンによって制御される酸素あるいは二酸化炭素の情報伝達に関わる遺伝子の変異体の低温馴化を測定した。また、これまでに、酸素情報と温度情報が統合されることで、低温馴化が調節されることを報告していたことから(Okahata et al., Science Advances, 2019)、酸素濃度が温度応答性の多様性に関わる可能性が考えられた。そこで、飼育酸素濃度を変化させた際に温度受容ニューロンの温度応答性を測定するための実験系を立ち上げた。具体的には、酸素濃度制御装置を用いて、顕微鏡ステージに取り付けたチャンバー内の酸素濃度を制御しながら、カルシウム濃度変化を測定する光学系装置の開発を行った。さらに、この実験系に適したカルシウムインディケーターを検討するため、複数の種類のカルシウムインディケーターを発現させた線虫を用いて条件検討実験を行った。
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