研究課題/領域番号 |
17J00694
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浜島 りな 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | リボソーム / NRD / 機能不全変異rRNA / 出芽酵母 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、25S rRNAに変異を持つリボソームの分解機構25S NRDに着目した解析により、真核生物におけるリホボソームの分解経路とその制御機構を明らかにすることを目的としている。先行研究から、出芽酵母の25S NRDにおける機能不全リホボソームの分解は、プロテアソームによる数個のタンパク質の分解が引き金になると予想された。そこで、プロテアソームの標的分子をリボソーム分解の鍵因子と仮定し、機能不全リボソーム分解中間体が蓄積する出芽酵母株を用いた解析により鍵因子を特定することを目指す。本年度は、以下の2つの研究を行った。 (1) 機能不全リボソーム分解中間体の精製法の確立 質量分析によりプロテアソーム作用前後の分解中間体の構成タンパク質を比較することで鍵因子を特定できると考え、まず、分解中間体の精製法の確立に取り組んだ。実験には、先行研究でプロテアソーム作用前後の分解中間体が蓄積することが確認されている株を用いた。はじめに、これらの株において、培養の条件、遺伝子の発現抑制の条件、機能不全変異rRNAの発現開始と停止の条件について検討を行い、分解中間体が蓄積する条件を決定した。次に、分解中間体を精製するために、アビジン-ビオチン相互作用を利用したプルダウンアッセイを確立した。このプルダウンアッセイにより、分解中間体を回収することが可能になった。 (2) 候補遺伝子アプローチによる鍵因子の探索 先行研究により、機能不全リボソーム分解中間体の25S rRNAは末端から分解されることが示唆されている。そこで、60S リボソームの結晶構造から25S rRNAの末端に位置するリボソームタンパク質をピックアップし、それらがプロテアソーム作用後の分解中間体に含まれているかどうかを免疫沈降により調査した。その結果、いくつかのタンパク質が分解中間体に含まれていないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題は、25S rRNAに変異を持つリボソームの分解機構25S NRDに着目した解析により、真核生物におけるリボソームの分解経路とその制御機構を明らかにすることを目的とするものである。 今年度は、まず、機能不全リボソーム分解中間体の精製法の確立に取り組んだ。機能不全リボソームが十分に蓄積する条件と機能不全リボソームを回収する方法については予定通り確立された。しかし、回収画分に存在する内在性リボソームの割合が予想に反して高かったため、これについてのさらなる条件検討を進めているところである。 また、60S リボソームの結晶構造から25S rRNAの末端に位置するリボソームタンパク質に着目し、これらが分解中間体に含まれるかどうかの調査を行った。その結果、いくつかのタンパク質がプロテアソームの標的タンパク質である可能性が示された。 このように、当初の計画から若干遅れてはいるものの概ね研究は進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
機能不全リボソーム分解中間体の精製に関しては、分解中間体の回収は可能になったが、非特異的な結合等により内在性リボソームが回収した画分に混在しているため、現在の状況では質量分析による解析が困難である。そのため、ショ糖密度勾配遠心法による分画や回収に用いるビーズの変更など、内在性リボソームの割合を小さくする条件の検討を行い、その後質量分析による解析を行う予定である。 また、2018年度にピックアップした候補因子については、さらなる機能解析を行い、質量分析による解析の結果と合わせて、プロテアソームの標的分子の決定を目指す。
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