研究課題/領域番号 |
17J00700
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
渡邊 龍憲 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 姿勢制御 / 協調性 / 随意性 / 高齢者 / 転倒 / 筋電図 / 動揺 / 神経筋生理 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、高度な身体の随意的制御を要する難度の高い立位バランスについて、その能力が加齢により低下する神経生理学的機構を解明し、能力低下に対する新しい運動介入を開発するための基礎的なデータを収集することである。本年度は、片側立位の制御機構について検討した。 片側立位時に、重心位置と下腿三頭筋の各筋から筋電図信号を計測し、これら2種類の信号間の位相の揃い具合をコヒーレンス解析を用いて評価した。その結果、2種類の信号は、5Hz以下の低い周波数帯域において位相が揃っていることが示された。また、内側腓腹筋とヒラメ筋は身体の外側への動揺に対して活動し、外側腓腹筋は内側への動揺に対して活動することが分かった。さらに、位相には100ms~250ms程度の位相差があり、筋が身体動揺に先行して予測的に活動していることが明らかとなった。すなわち、外側(または内側)へ身体が動揺する前に、内側腓腹筋とヒラメ筋(または外側腓腹筋)が活動していた。さらに、これらの身体動揺と筋活動の関係性は、若年者と比べて高齢者において強いことが明らかとなった。 加えて、下腿三頭筋各筋の信号間の協同的活動をコヒーレンス解析を用いて評価した。その結果、両側立位から片側立位に姿勢を変えることにより、15~35Hzの周波数帯におけるコヒーレンスが全ての筋電図間(内側腓腹筋と外側腓腹筋、外側腓腹筋とヒラメ筋、内側腓腹筋とヒラメ筋)で増大することが示された。また、5Hz以下の周波数帯におけるコヒーレンスが内側腓腹筋とヒラメ筋の筋電図信号間で増大することが示された。この増大は、他の下腿三頭筋から得られる筋電図信号間では見られなかった。内側腓腹筋とヒラメ筋間のコヒーレンスの増大は高齢者においてその程度が大きく、身体動揺の増大と相関することから、内側腓腹筋とヒラメ筋の協同的な活動が加齢による身体動揺に影響することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は片側立位の制御機構に着目し、加齢による影響を検証した。結果については、国際的学術誌に投稿し採択されている。加齢により制御能力が低下するリーチング動作の制御機構の検証もすでに進めており、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
身体を随意的に制御して前方に移動するリーチング動作は加齢により困難になる。そのため、転倒リスク評価に用いられることが多い。今後は、このリーチング動作の制御機構に着目して、加齢による影響を検証する予定である。また、加齢による制御能力低下に関わる最も影響力の高い因子を検討する予定である。
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