研究課題
本研究の目的は、「水素」が地球中心核の主要な軽元素かを検証することにある。地球中心核に存在する水素量の制約は、地球の起源物質中に含まれた水の量の決定に不可欠である。本研究で得られる成果は、地球の起源物質や形成過程の理解を深めうる。本研究課題では、A)レーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセルにより、鉄-水素系の超高圧・高温実験を可能にする技術を確立すること、B)その技術を用い、各圧力・温度・水素量における鉄-水素系の状態図を明らかにすること、C)鉄-水素合金の密度・圧力関係(状態方程式)を高圧まで明らかにすること、を当初の課題とし、それぞれ成果を得た。さらに、D)地球中心核の形成温度・圧力下における水素のメタル-シリケイト間の分配比を明らかにする研究課題にも取り組んだ。本研究結果から、水素は地球核の主要な軽元素の一つであることが支持される。まず、下限値については、課題Dの結果をコア形成モデルと組み合わせることで制約を行った。いずれのモデルでも、[現在の表層+マントル]の水量と平衡する核の水素量は、0.3 wt.%以上(密度欠損のおよそ3割以上を説明)となる。一方、課題A-Cの結果と、近年得られた第一原理計算結果を組み合わせると水素の外核の固溶量は、1 wt.%まで矛盾しないことがわかる。その範囲であれば、外核の密度と縦波速度、重たい内核の結晶化、という軽元素決定のクライテリアについて、矛盾しない。核に含まれる0.3 wt.%の水素は、地球の起源物質中に海洋の35倍もの水(・水素)が含まれていたことに相当する。本研究の結果は、地球や太陽系の形成において、水素や水が重要な役割を果たすことを意味している。また、得られた技術は、単体水素の実験など、固体物性の研究等にも応用可能である。今後、水素と他の軽元素を含む多成分系の実験を重ね、核の組成モデルの精密化を行う。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 7件、 招待講演 2件)
American Mineralogist
巻: 105 ページ: 917~921
10.2138/am-2020-7153
巻: 104 ページ: 1603~1607
10.2138/am-2019-7081