1.感情表現モデルにおける「覚醒度」と「感情価」の関係性の評価、2.ユーザの生理計測に基づくロボットの生理現象表現の検討、3.生理現象ロボットの応用に向けた外観と触感の関係性に関する調査を実施した。 まず、ロボットの情動を擬似的な生理現象によってユーザに知覚させるための取り組みにより、呼吸における吸気/呼気比率が呼吸速度との相互作用において感情の感情価の表出に寄与していることが明らかになったため、覚醒度と感情価の2軸に対応した呼吸速度および吸気/呼気比率制御による内部状態-生理現象モデルを新たに構築した。 次に、既存の生理現象ロボット制御ユニットへの入力が可能なユーザ生理指標の取得デバイスを実装し、ユーザ生理指標のセンシングに基づくロボットの生理現象表現動作生成設計と、ユーザの生理現象とロボットの印象に関する評価を行った。結果、ロボットによる再現が生理現象生物らしさや人間らしい変化を感じさせる一方で、ユーザの生理現象の誇張表現が自身の生理状態と類似しているように知覚される可能性が示唆された。 最後に、人工的な擬似生理現象表現の応用可能性を検討するために必要な検討として、生理現象表現を搭載したロボットの外観と表面素材による違和感や気持ち悪さ、生命感や生物感、リアルさなどについて議論した。被験者実験の結果、ロボットに擬似的な生理現象表現を付与する場合、ロボットの外観と表面素材は、生理現象のリアルさ、違和感や気持ち悪さ、生物感や生命感に影響を与えることが示唆され、提案手法の擬似的生理現象表現を付与したぬいぐるみロボットの外観をより本物の犬のような外観に近づけた場合においても気持ち悪さや違和感を感じさせにくいという示唆を得た。今後の活用において、医療・福祉分野においてペットなどの動物を用いたアニマルセラピーの代替として生理現象を搭載したロボットの活用に関する検討にも期待できる。
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