研究課題/領域番号 |
17J00713
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高須賀 大輔 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | マッデン・ジュリアン振動 / 赤道波 / スケール間相互作用 / 熱帯気象 |
研究実績の概要 |
本年度は当初の計画通りの研究内容である 1) MJOの発生領域の変調/決定における背景循環場の影響 に加えて、前年度の研究成果に基づき 2) 混合ロスビー重力波 (MRG) を含む渦成分を伴う赤道波擾乱のMJO発生・東進開始への影響 の2点について、再解析データや全球雲システム解像モデルNICAMによる数値実験、現場観測データを複合的に利用しながら調査した。 1) について、昨年度の時点で既に影響が示唆されていた発生領域東側の高い海面水温 (SST) の役割を検証するべく、NICAMによる多数の短期間 (50日積分) の感度実験を行った。結果、MJOの発生・東進開始を助ける働きは見られたものの、発生領域の決定自体には既に作られていた大気場の影響の方が大きいことが分かった。そこで、ある時点での大気場がどうあるべきかは背景循環場に依存するという作業仮説を立て、背景循環場を部分的に規定する要因となる「MJOと比較して長い時間スケールで変動するSST」を検討したところ、海大陸 (西太平洋) で発生する場合には海大陸南東部 (東西インド洋) に有意な偏差シグナルが認められ、それと整合的な背景循環場も確認された。現在はこの結果に基づいて設定した半理想的なSST分布をNICAMの境界条件に与えて5年ないし10年積分を実行し、SST分布とMJOの活動度・発生領域の変調との関係の検証を進めている。 2) については、インド洋における集中観測 (YMC-Sumatra 2017) で得られた現場観測データ等を用いた解析により、MRGはMJO発生前の対流圏中層の湿潤化に寄与するとともに、背景場の影響を受けて西インド洋で対流活動と強く結合することでMJO対流を励起し、東向き群速度での波束伝播を通してMJOの東進を駆動することがわかった。本内容は新たなMJOの発生・東進機構として国際誌に受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に計画していた当初の課題である「MJOの発生領域の違いに着目したMJO発生条件の統一的理解」について、再解析データや全球雲システム解像モデルを用いた複数の実験結果の解析により、SST分布とそれに伴って部分的に規定される背景循環場との関係性から解釈できる可能性が示された一方で、論文投稿に向けた作業は現在行っている最中である。しかし、当初は予期されていなかった「MJOとMRGとのスケール間相互作用の重要性」については、その調査によって結果的にMJO発生・東進を統一的に説明する新機構の提唱につながり、国際誌に受理されるに至っている。以上を総合して、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
MJOの発生領域の変調要因の解明にあたっては、必要に応じてNICAMによる追加の感度実験 (境界条件の変更など) を行いながら本年度に得られた知見を定量的に評価し、投稿論文としてまとめる。また、MJOとMRGとのスケール間相互作用については既にその一般性を検証した内容の論文を執筆中であり、早急に完成させて投稿する。
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