研究課題/領域番号 |
17J00738
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
柏木 光昭 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | マウス / レム睡眠 / ノンレム睡眠 / 神経科学 / 化学遺伝学 |
研究実績の概要 |
ネコを用いた大規模な破壊実験や薬理実験から、脳幹領域が睡眠覚醒に重要な役割を果たすことがかねてより示されているものの、その実行を担うニューロンの具体的なサブタイプやメカニズムについては現在でもあまりよく分かっていない。本研究では、脳幹領域の中でも特徴的な発現パターンを示す遺伝子群に着目し、それらを発現するニューロン群が睡眠覚醒へ果たす役割を検討した。そのために、ニューロンの活動を直接操作し、睡眠覚醒への影響を直接観察することで、ニューロン集団が睡眠覚醒制御に果たす役割を探索した。具体的には、着目した遺伝子の下流で遺伝子組み換え酵素Creを発現するノックインマウスを導入し、さらに脳幹部位にCre酵素依存的にhM3Dq受容体を発現させるアデノ随伴ウイルスベクターを微量注入した。hM3Dq受容体は、マウスの内在性のリガンドには反応せず、人工リガンドCNO(clozapine-N-oxide)により一過性の神経発火を促す人工受容体である。このような手法を用いて、今回着目したニューロン群をCNO投与により活性化させたところ、ノンレム睡眠が誘導された。その一方、これらのニューロン群のみに破傷風毒素を発現させ活動を阻害したところ、活性化した時とは対照的にノンレム睡眠量が減少した。 続いてこれらのニューロンの投射先を調べた。興味深いことに、投射元に発現する遺伝子がその投射先にも選択的に強く発現していた。投射先ニューロンを上述の化学遺伝学を用いて活性化したところ、投射元を活性化した時と同様に、ノンレム睡眠が誘導された。以上の結果を踏まえると、脳内に散在する共通の遺伝子発現パターンを持つニューロン群が、ノンレム睡眠を制御する神経回路を構築している可能性が新たに示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ノンレム睡眠の誘導を担うと考えられるニューロンに関して、その活動を実際に人為的に操作したことで、実際にノンレム睡眠が誘導されることを確認できた。加えて、これらのニューロンの機能阻害により、ノンレム睡眠量が減少することも確認できた。これらのニューロンの投射パターン、及びその下流メカニズムの解析も進んでおり、おおむね順調に進展しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは遺伝子発現のパターンそのものを手掛かりとして、脳内の様々な領域でノンレム睡眠制御に関わっていると考えられる複数のノンレム睡眠促進ニューロンを同定した。今後は、今回着目した遺伝子が神経活動に影響を与えるのか否か、解析を進めていく予定である。
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