現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1年度目の予定は,1) 土壌Cの埋蔵量推定,2) 林内河川の難分解性DOC測定と凝集沈殿特性評価,3) 水文モデリングによる水の動きの解析および難分解性DOCマスフローの把握,であった. 1)については終了した.石垣島マングローブ林の土壌は平均深度が約1 mであり,土壌炭素貯蔵量(根は除く)は296 ± 56 Mg C/haであることが分かった.この値は世界平均(283 ± 193 Mg C/ha,Atwood et al., 2017)と同程度であった.2)については終了した.おおよそ4か月に一回のサンプリングを3年間継続し,季節や降雨,潮汐のタイミングなどが異なる様々な条件におけるDOC測定をおこなった.源流ーマングローブー海におけるDOCの動態(供給・沈殿)を解析した.また,林内土壌の脱塩洗浄をおこなった際に溶出したDOC溶液に再び海水塩を加えると,最大で71%(炭素換算)が再沈殿することを見出した.3)については測量調査を実施し、潮位変動に対応した水の動きを表現する水文モデリングを構築した。2)の分析結果と併せて難分解性DOCの量を計算中である。 これらに加え,林内土壌有機物(フミン酸・フルボ酸)の深度別(0-25, 25-50, 50-75, 75-100 cm)の詳細な化学構造特性解析をNMR分析と光化学的手法,元素分析によっておこなうことができた.これらは計画にはなかったことだが,成分別の生物地球化学的・生態学的役割を区別して議論や考察をおこなう必要性を示すことができ,マングローブ林生態系における物質循環を考えるうえで重要な結果である. さらに,石垣島との比較として開始したタイのトラート川マングローブ林における調査・サンプリング・分析も進んでいる.よって評価は計画以上の進展とした.
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