研究課題
メインの調査地である石垣島吹通川マングローブ林においては,予定していた調査および研究を滞りなく実施し,研究成果は前年度と合わせ6本の論文として既に公表済みであり,さらに2本が投稿中である.比較研究としてタイ王国トラート川河口のマングローブ林の土壌調査を行い,その結果も現在執筆中である.さらに,予定にはなかった奄美大島のマングローブ林においても調査を行うことができ,次の研究に向けた計画を練るうえで貴重な情報を得ることができた.2年間という短い特別研究員としての期間を十分に活用し,大きな成果を得ることができたと考えている.採択課題のメインはマングローブ林内土壌への土壌有機物の貯留メカニズムの解明であった.前年度の結果と合わせ,高塩濃度による河川中の溶存有機物の沈殿および土壌中の土壌有機物の凝集・固定化が効いていることを見出し,国際誌に発表した.さらに,塩濃度が高い環境で土壌有機物が固定化されるということは,逆に塩濃度が低下すると土壌有機物が固定化状態から解放され,マングローブ林土壌から沿岸海域へと溶存有機物として流出することを示唆する.そこで,当該マングローブ林内を流れる吹通川において2年間の溶存有機物濃度のモニタリング調査をおこなった.その結果,台風由来の大雨による淡水の流入が土壌の塩濃度を低下させ,通常時の数倍濃度の溶存有機物が流出することを発見した.このことはマングローブ林における高塩濃度による土壌有機物の固定化は決して安定したメカニズムではなく,淡水―海水の相対寄与によってダイナミックに変わりうることを示している.これは河川による淡水の流入と潮汐による海水の流入があるマングローブ林に特異な現象であり,今後のさらなる研究が必要である.
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (4件)
Regional Studies in Marine Science
巻: 27 ページ: 100516~100516
10.1016/j.rsma.2019.100516
Journal of Tropical Ecology
巻: 34 ページ: 268~275
10.1017/S026646741800024X
Aquatic Sciences
巻: 80 ページ: -
10.1007/s00027-018-0578-z