研究課題/領域番号 |
17J00813
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
千草 颯 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 超対称模型 / 暗黒物質 / 消失飛跡 / 精密測定 |
研究実績の概要 |
大統一理論と相性の良い、高いエネルギースケールを持った超対称模型のうち、理論的な単純さから好まれるアノマリー伝搬模型に着目し、比較的軽い新粒子である3種類のゲージーノの探索手法を調査した。比較的長寿命で、検出器の内部を一定距離飛んだ後に崩壊する荷電ウィーノと呼ばれるゲージーノを用いて、これが崩壊により与える消失飛跡の情報からイベントを同定し、ゲージーノの探索に利用した。本年度の研究では、将来の運用が計画されている高エネルギー加速器実験を用いて、消失飛跡の信号によりゲージーノの探索が可能であること、また荷電ウィーノの速度測定を通じて、三種類のゲージーノの質量も高精度で決定できることを示した。 また、超対称模型で暗黒物質の候補として有力なヒグシーノと呼ばれる粒子に着目し、これを探索するための方法も与えた。本年度の研究では特に、標準模型の粒子が生成される過程の精密測定を通じて、新粒子が残す信号を抜き出し、新物理の兆候を見出す可能性に関して議論した。この手法はヒグシーノの探索に関して非常に強力であり、さらに信号の形を精密に測定すれば、ヒグシーノの質量を同定し、予言通りの電荷を持つかの検証も行えることを示した。この手法は超対称模型の枠に留まらず、ヒグシーノと同様の性質を持つ暗黒物質候補の検出や、性質の決定にも応用が可能である。また、この手法自体を別の標準模型過程に応用することで、全く異なる性質を持つ新粒子であっても、標準模型の粒子と何らかの相互作用を持てば探索が可能であり、今後の研究における発展が大いに考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、現在までに実験で測定された物理量を用いて理論的な考察から模型の検証を行う予定であったが、本年度においては新粒子に高い感度を持つ実験を提案し、模型の検証に用いることができる新粒子の情報を実験から抜き出せるよう、実験側からのアプローチを工夫するという方針で研究を進めた。それにより超対称模型が予言する理論的に興味深い種々の粒子に対して強力な検出方法を与え、その性質の決定を通じて模型の検証に応用できる地点にまで到達したため、本年度の研究は当初の計画以上に発展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針としては、本年度の研究手法を用いて得られることが明らかとなった新粒子の情報を用いて、高エネルギースケールを包括的に扱う模型の検証に応用することを考えている。その際、実験における観測値を高スケールにおける値へと変換するための関係式を慎重に導く必要がある。その一部は、初年度の研究において作成した計算コードを応用することで対応が可能であると考えられるため、これを用いて解析を進める。
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