データ解析によるガンマ線バースト(GRB)の研究と金沢大学超小型衛星に搭載する広視野X線撮像検出器の開発を行った。 (1)データ解析:赤方偏移が測定されている短時間GRBの残光放射について、X線と可視光・近赤外線帯域を合わせた多波長エネルギースペクトルを作成した。スペクトルフィッティングを行い、バースト毎にX線の吸収と可視光・近赤外線の減光量を系統的に計算した。吸収量と減光量の相関関係から、短時間GRBの周辺環境が天の川銀河と類似していることを示した。このことは短時間GRBが星形成領域とは異なる領域で発生するという理論的な予想を支持する初めての観測的事実である。また、重力波源の性質の理解という重要課題に対して貢献する成果であり、本研究の当初の目的を達成できたと判断できる。 (2)検出器開発:昨年度構築した真空チャンバとX線発生装置を組み合わせたシステムを用いて、フライトモデルと同等のシリコンストリップ検出器と高利得アナログ集積回路が実装されたプリフライトモデルの動作試験及び性能評価を行った。さらに、フライトモデルの筐体設計に向けた熱真空試験を行い、検出器の性能が最大限活かせる温度まで受動的に冷却できる筐体の熱設計を行った。大学衛星の相乗り公募の機会が提供されていないことから、衛星の打ち上げまでを実現することはできなかったが、検出器のフライトモデル開発において、十分な成果を挙げることができた。
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