本研究は表皮ケラチノサイトの細胞死抑制が皮膚恒常性にどのように寄与するかを明らかにすることを目的とする。表皮特異的に細胞死抑制因子cFLIPを欠損するマウスを用いて解析を行った結果、表皮特異的cFLIP欠損マウスは表皮のカスパーゼ依存性アポトーシス亢進を伴い胎生期に致死に至る重篤な皮膚炎を発症した。デスリガンドTNFαの受容体TNFR1を欠損するマウスと交配することで表皮特異的cFLIP欠損マウスの胎生致死は改善し正常に出生したが、生後数日で過角化を伴い致死に至る重篤な皮膚炎を発症した。この表皮特異的にcFLIPを欠損し、全身性にTNFR1を欠損する二重欠損マウスの皮膚は顕著に高い経皮水分蒸散量の値を示し、水分保持機能が損なわれ皮膚恒常性が破綻していることが示された。二重欠損マウス由来のケラチノサイトを用いたin vitroでの細胞死誘導試験、生体への中和抗体投与試験により、TNFα以外のデスリガンドFasLとTRAILがケラチノサイトのカスパーゼ依存性アポトーシスを誘導し皮膚炎の発達に寄与していることを明らかにした。また表皮特異的cFLIP欠損マウスの皮膚炎症部位ではケラチノサイトの分化マーカー分子LoricrinとKeratin 10の発現が消失しており、ケラチノサイトが分化障害に陥っていることが考えられた。さらなる解析により、炎症の結果皮膚で高発現する炎症性サイトカインIL-6がin vitroでケラチノサイトの分化マーカー分子の発現を抑制することを明らかにした。上記の内容はJournal of Allergy and Clinical Immunology にて発表した(doi: 10.1016/j.jaci.2018.02.043.)他、2018年8月に米国メーン州ニューリーで開催されたゴードン会議にてポスター発表を行った。
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