研究課題/領域番号 |
17J00971
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
三宅 俊浩 名古屋大学, 人文学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 可能動詞 / ラ抜き言葉 / 尾張方言 / ナル / 無意志自動詞 / 可能表現 |
研究実績の概要 |
本年度は①可能動詞の歴史、②尾張方言におけるラ抜き言葉の歴史、③可能用法ナルの歴史、の3つの課題に取り組んだ。 ①については、まず中世末期に文献に出現する「読むる」及び近世に一段化する「読める」の位置づけを探ることから始めた。中世末期のキリシタン文献には「読むる」が「切るる」等の下二段無意志自動詞と一括して説明される。ここから、中世末期から近世前期における無意志自動詞と「可能」との関係を踏まえ、初期の「読むる」「読める」が無意志自動詞としての性質を逸脱していないことを指摘した(論文化)。その上で、近世以降、動作主の行為の実現を表わす用法を橋渡しする形で動作主の能力を表す用法へと展開したことを指摘した(論文化)。 ②については、近世の尾張方言の可能表現を記述し、いわゆる「ラ抜き言葉」が中央語に100年先行して出現することを報告した(論文化)。そのうえで、ラ抜き言葉を成立せしめた尾張方言の方言的特性として、頻用動詞である存在動詞が中央語とは異なりラ行五段動詞「オル」であったことが影響したとの仮説を報告した(学会発表)。 ③については、中世室町期以降に見られる「~することがナラヌ」の成立を探った。中古では「事がナル」で行事の終了を表わす用法に偏っていたが、中世前期から15世紀にかけて、行為の非成就を表わす用法に傾斜していく。こうした変化の末に、16世紀以降、「~することがナラヌ」といった慣用表現が成立・定着したとの仮説を示した(学会発表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記「研究実績の概要」に示したとおり、現在までの進捗状況は概ね順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
ラ抜き言葉の歴史的研究に関しては、尾張方言だけでなく、その他運用が豊富な地域、具体的には中国四国地方、近畿南部、東北地方の状況を十分に吟味する必要が有る。 ナルの歴史的研究に関しては、近世以降の運用状況を見据える必要があるとともに、近世後期に可能表現化しナルを淘汰したデキルの歴史を勘案する必要がある。 今後は上記二点の研究も視野に入れていく考えである。
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