本年度は、第一に、地域で視覚化・具体化される海軍の宣伝活動と、そうした宣伝活動と志願兵募集を担った地方海軍人事部の動向に注目して研究を進めた。また、第二に、海軍と地域社会との関連を解明するのに資する史料や海軍の人事にかかわるものを中心に史料収集を行った。本年度に収集した史料の概要は下記の通りである。 ①各地域の海軍兵事資料 地域における志願兵徴募やそれに対する宣伝活動を解明する上で、村レベルで作成された海軍志願兵徴募や映画会について書かれた史料は重要である。そこで、市町村で作成された兵事資料の現存する新潟県上越市、静岡県磐田市、長野県上伊那郡中川村などの史料について調査を行い、資料の閲覧と複写収集を行った。これら今回の調査先は主として横須賀鎮守府と舞鶴鎮守府の管轄下にあるので、今後はほかの鎮守府の管轄下にある地域の事例との比較対照をするために、史料調査の対象地域を広げて史料収集を続けることにする。 ②海軍人事部報の収集 地域における海軍とその活動実態を明らかにするためには、各地域に置かれた海軍鎮守府内の海軍人事部が果たした役割を明らかにすることも重要である。そこで、各鎮守府の人事部が発行した「海軍人事部報」に注目することで、各鎮守府人事部の活動実態を復元することを目指した。現在、舞鶴鎮守府に関する「海軍人事部報」はほぼすべてを、呉鎮守府と横須賀鎮守府は3割程度、佐世保鎮守府については1割程度の収集を終えた。今後も収集を続けていく。 なお、このほかにも、防衛研究所所蔵資料や国立国会図書館憲政資料室所蔵の史料など、海軍の宣伝活動にかかわる史料を広く収集した。これら収集史料を整理して論点にまで高めてゆくのが当面の課題である。
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