1.Bt毒素新規受容体探索系の改良:Cry1Aaの受容体カドヘリン様タンパク質を初めて、また高いLC-MS/MSスコアで検出できた。これは今までで一番Cry1Aa毒素に結合する膜タンパク質を高濃度に濃縮できたことを意味していたが、それでもABC transporter C2 (ABCC2) は検出できなかった。ABCC2がカイコガ中腸においてカドヘリン様タンパク質よりさらに10倍低い発現量を示すためだと考えられ、より高濃度にABCC2を濃縮する手法が必要だと分かった。 2.Bt毒素の潜在的なABC transporter利用能力:カイコガ中腸に発現する55種類のABC transporter のうち、6種類のABC transporterとカイコガを殺せる5種類のBt毒素を題材に、Bt毒素が受容体として利用できるABC transporterがどれほどあるかを解析した。その結果、1種類のBt毒素がその強弱はありながらも複数のABC transporterを受容体として利用できることが示された。 3.ABCC2との結合に重要なBt毒素上のアミノ酸残基の解析:カイコガのABCC2 (BmABCC2) に対する結合親和性が低いCry1DaとCry9Daにおいて、ドメインIIのループ2の根元の領域ごとBmABCC2を受容体として利用できるCry1Aaのものにすげ替えたところ、BmABCC2に対する結合親和性が向上した。これは異なる毒素の種類を超えて、この領域がABCC2との結合に重要であることを意味しており、Bt毒素の人為的改変のための変異導入部位が明確となった。 4.タンパク質工学の実施:前年度からさらに改良を重ねた実験条件で、Cry1Aa毒素の変異体ファージライブラリーを用いてBmABCC2に対してパニング選抜実験を試みたところ、数種類の変異体Cry1Aaが濃縮、すなわち選抜された。
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