研究課題/領域番号 |
17J01082
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
岡田 聡史 神戸大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | イネ / 粒大 / 量的形質遺伝子座(QTL) / ゲノムワイドアソシエーション解析(GWAS) / 酒米 / QTL集積系統 |
研究実績の概要 |
本研究では、日本酒の醸造に適したイネ品種である酒米品種が持つ玄米の大きさを制御する量的形質遺伝子座(Quantitative trait locus: QTL)の同定と原因遺伝子を特定する。さらに、それらのQTLを「コシヒカリ」遺伝的背景に集積した系統を作出し、QTL間の相互作用や粒重が大きい系統の収量性を調査することを目的としている。 H29年度は「山田錦」の粒幅と粒重に大きく寄与している染色体5と染色体10に座乗するQTL (それぞれqGWh5とqGWh10)の原因遺伝子同定を目的にマッピングを行った。qGWh5は約228kbの領域に狭めることができ、この領域内で変異情報の比較を行った結果、非同義置換が存在する5つの遺伝子の内、2つを候補遺伝子とした。また、qGWh10が分離する3072個体から組換えが起こった個体を選抜し、後代検定の準備を行った。 さらに、酒米品種を含む日本水稲品種群を用いて1000粒重、粒幅、粒長、粒厚に対してGenome-wide association study (GWAS)を行った結果、各形質に関連するいくつかの座位を検出した。この内、粒幅ではqGWh5と一致し、このQTLは酒米品種内で保存されてきた可能性が示唆された。 また、qGWh5とqGWh10に加えて、粒長に寄与している染色体4のQTL (qGL4)を含めた3つのQTLにおけるQTL集積系統を作出して、QTL間の相互作用を解析した。その結果、qGL4は粒幅と粒厚ではqGWh5と、粒長ではqGWh10と同じ制御経路であることが推測された。また、qGWh5とqGWh10は独立した制御経路に関係することが示唆された。さらに、これら3つのQTLに加えて粒長に寄与する染色体11のQTL (qGL11)を集積した系統の作出に向けたF1系統を育成し、種子を増殖することでH30年度の選抜の準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
QTLの原因遺伝子特定のためのマッピングやGWAS、QTL集積系統を用いた解析のいずれもほぼ研究計画どおりに進捗している。特に、QTL集積系統を用いた解析については学術誌への投稿のためのデータが蓄積できた。したがって、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
概ね当初予定していた研究計画通りに、原因遺伝子の特定、GWAS、粒形QTL集積系統の解析を進める。ただし、qGWh5はH29年度の解析では、約228Kbの領域まで絞り込み、候補遺伝子を選定したが、絞り切ることができなかったので、H30年度においてもマッピングを継続する。このマッピングに使用する組換えが起こった個体の選抜は既に完了しているので、さらに詳細な連鎖地図の作成とより確実性の高い原因遺伝子の同定が可能であると考えられる。
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