研究課題/領域番号 |
17J01104
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
陳 旻究 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 発光性結晶材料 / アンフィダイナミック結晶 / 結晶間相転移 |
研究実績の概要 |
本制度に採択されている研究課題で目的とすることは、発光性固体材料におけるその分子配列および分子運動を合理的に制御し、その光物性をコントロールすることと更なる新規機能の開発である。採択者は、分子性結晶のキラリティーおよび固体中における分子回転を発光性金(I)錯体とハイブリッドさせることにより、上記の研究課題に関して大きな進展をもたらすことができた。その研究成果を以下に示す。 1.結晶キラリティーに着眼した機械的刺激による結晶間相転移とそれに伴う発光特性の切り替えに成功:結晶の熱力学的安定性とそのキラリティの経験的な相関関係を示すWalach’s ruleをベースとした新規な結晶間相転移の発現とそれに伴い発光特性の変化を示す金(I)錯体を開発した。 2.機械的刺激および溶媒蒸気により可逆的な変化を示す単結晶単結晶相転移とその発光特性の切り替え:従来の機械的刺激応答性単結晶単結晶相転移は、その変化後の相から元の相へ戻すことは極めて難しい現象である。採択者は1で得られた知見を活かし、この研究を見事に達成した。 3.固体中における分子回転と金原子間相互作用による固体発光の制御:固体中にも関わらず、数kHzからMHzの分子回転が誘起できるアンフィダイナミック結晶と発光性金(I)錯体をハイブリッドすることで、固体中における回転部位の回転運動を制御することでその発光特性が制御できる系を見出した。 これらのことから、今年度の研究において当初目的とした研究内容を実際達成し、その研究成果を著名な学術誌に掲載することまで達成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究企画の段階で目的としたアンフィダイナミック結晶をベースにした発光性固体材料の開発に成功し、その研究成果を化学系のトップジャーナルであるJournal of the American Chemical Society 誌に投稿することまでできた点で当初の計画は十分達成できたと考えられる。 ダイポールが大きい回転部位を有する金(I)錯体の結晶に関しては、当初の計画以上の発見があった。例えば、回転部位の大きさを少し大きくすることで、回転部位の回転運動が結晶格子に与える影響が上昇し、その結晶の力学的特性にも大きく影響を及ぼすことができるといった新しい観点が見つかった。この発見により、固体中における分子の回転運動を用いたその固体の力学特性を制御するという概念を元にした新たなプロジェクトの進行が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画のうちに、光応答による固体中における回転運動の制御とその物性の切り替えがあったが、その代わりに、高いダイポールを有する回転部位を導入したダンベル型金(I)錯体の結晶を作成し、外部電場によりその回転部位のダイナミックスと発光特性を制御することを試みる。結晶一粒に対して外部電場をかけるということは一般的な測定手法ではないため、結晶一粒に電場をかけられる装置をセットアップしないといけない。この装置の組み立ての際には、発光スペクトルも取れるようにする必要があるため、顕微分光の装置で用いられる光ファイバーも取り込む予定である。
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