探索のターゲットとしている中性レプトンは、長寿命のため、ビーム衝突点由来の飛跡を想定したATLAS標準の飛跡再構成では再構成されない。そのため、ビーム衝突点から離れた飛跡に特化した再構成を行う必要がある。そのような飛跡及び崩壊点を再構成するアルゴリズムを用意し、再構成を行った信号事象のモンテカルロサンプル、及び2016年にLHC-ATLAS検出器で取得したデータを用意した。また、ATLAS実験で定義されているミューオン及び電子も飛跡がビーム衝突点由来である事を仮定しているので、そのような特徴を要求されるが、ビーム衝突点から離れたところ由来のミューオン、電子“らしさ”の定義を新たにおこなった。 用意した信号事象のモンテカルロサンプルを用いて飛跡の再構成効率、崩壊点の再構成効率を求め、信号事象の探索に十分な再構成効率があることを確認した。本研究のターゲットとなっている粒子の質量は、数GeV ~ 数十GeVと従来の同様の研究に比べてかなり低く、この手法が低質量領域の探索にも有用であることを示した意味で非常に重要である。また、同様にビーム衝突点から離れた崩壊点由来のミューオン及び電子の再構成効率も求め、十分な効率があることを確認した。 本研究の主な背景事象は宇宙線ミューオン、荷電粒子の物質とのハドロン相互作用、標準模型の準安定粒子、そしてパイルアップ由来の粒子が偶然重なり崩壊点を作るようなものである。それぞれの背景事象の候補について、個別により詳細な研究を行うとともに、それらの背景事象を包括的に見積もる手法を考案した。
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