研究実績の概要 |
申請書に記載したとおり、本年度は“火星衛星形成円盤を生み出す巨大衝突の数値計算”を実行し、計画が進む日本の火星衛星探査計画において得られるサイエンスを最大化することを目的とした研究を行った。
火星衛星は、巨大衝突によってばらまかれた衝突破片が再集積することで形成されうると考えられている。申請者は、巨大衝突を解くのに適切な状態方程式を導入した衝突SPH計算コードを用いて、衝突シミュレーションを多数回実行した。特に、本研究の火星衛星形成衝突計算は、世界最高解像度のものであり、それによって衝突破片物質の詳細な熱力学的な情報を得ることが可能となった。得られた熱力学的な情報から、まず我々は、衝突破片物質から一部の揮発性元素が抜け出し、そこから形成される火星衛星は揮発性元素に乏しくなっていることを理論的に導き出した。さらに、巨大衝突によってばらまかれた火星起源の衝突破片の一部は、内側太陽系に広くばらまかれ、一部が小惑星帯に埋め込まれる可能性を指摘した。これは観測されるAタイプ小惑星の起源となりうる。
このような研究結果は、将来の火星衛星探査や、小惑星探査・観測を通して、太陽系形成史の解明に繋がり、重要となる。本研究は、日本の査読ありの国際学術誌に投稿し、出版されている(Hyodo et al. 2018, ApJ, Hyodo & Genda 2018, ApJL)。
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