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2018 年度 実績報告書

ポーラロン伝導酸化物薄膜の熱電特性に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 17J01281
研究機関北海道大学

研究代表者

小野里 尚記  北海道大学, 大学院情報科学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2017-04-26 – 2020-03-31
キーワード熱電変換 / 熱伝導率 / エレクトロクロミックデバイス
研究実績の概要

熱電変換材料はその性能を無次元性能指数ZT=(s^2・σ)T/k (S:熱電能,σ:導電率, k:熱伝導率)を用いて示す。本研究では真に実用的なZT~1以上を目指す方針としてZTに二乗で効いてくる熱電能増強のため、低温域での異常な熱電能の上昇であるフォノンドラッグ現象、または同じくZTに大きく寄与する熱伝導率kについて注目している。本年度は昨年度から継続している層状コバルト酸化物AxCoO2薄膜の熱伝導率計測に関して、CoO2層の隣接層に注目した。様々な隣接層をもつAxCoO2薄膜作製し、その異方性熱伝導率を計測しその関係性について調査を行なった。次年度で現象の完全な理解を進める予定である。さらに熱伝導率の関して、いくつかの結晶方位が異なったNbO2薄膜を作製、TDTR法を用いてそれぞれの熱伝導率を測定し、NbO2における熱伝導率テンソルを明らかにした。また今年度は自身が修士課程から行なっている酸化物エレクトロクロミックデバイスの研究開発も行なった。電子カーテンや自動車の防眩ミラーとして応用されているエレクトロクロミック(EC)素子は、EC材料の金属イオンを電気化学的に酸化・還元することで生じる色調変化を利用し、外光を選択的に透過・遮断可能なデバイスである。このようなEC素子の活性層として用いられる酸化タングステン(WO3)は、アルカリ金属イオンやプロトンとの電気化学反応により、無色透明絶縁体⇔黒色金属の可逆的な光・電子物性変化を示すことが知られている。WO3の可視光透過率と導電性の変化を利用することで、今までの視覚による色変化の情報「透明」「黒」に加え、電気的に情報「0」と「1」を記憶・読み出すことが可能な、新しい情報表示・記憶装置になると期待できる。今年度はデバイス構造を改良することで低電圧(±3V)、高速動作(1秒以内)のデバイスの作製に成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

今年度は主に3つの研究課題に取り組んだ。1つめに層状コバルト酸化物AxCoO2薄膜の熱伝導率計測に関して、CoO2層の隣接層に注目し様々な隣接層をもつAxCoO2薄膜を作製、その異方性熱伝導率を計測した。次年度で現象の理解を進める予定である。2つめはECデバイスである。現在のEC素子の多くは二枚の透明電極間に活性層を挟み込んだ平行平板型エレクトロクロミックディスプレイ(ECD)構造であるため、高速動作できるが色調変化のみの利用であり活性層の導電性変化を利用することはできなかった。色の変化に加え導電性の変化を利用するためには、薄膜トランジスタ(TFT)のような三端子構造を用いたエレクトロクロミックトランジスタ(ECT)を開発する必要がある。我々のグループは2016年に色調-導電性を同時変調可能な全固体WO3-ECTの開発に成功した[Sci. Rep. 6, 25819 (2016)] 。しかしながら、このデバイスはプロトン化・脱プロトン化に高いゲート電圧(~10 V)で長時間(数10 s)電流を印加する必要があった。そこで下部TCO層を挿入したECTとECD構造を組み合わせた新たな全固体WO3-ECTの開発を行なった。結果的に±3V、1秒以内の高速動作に成功し、AIP Adv.誌に論文掲載された。また、これにより某企業との共同開発が始まった。
3つめにNbO2薄膜の熱伝導率テンソルを明らかにした。国際共同研究で作製した異なった結晶方位のNbO2薄膜の熱伝導率をTDTR法を用いて計測、NbO2の熱伝導テンソルを明らかにし論文掲載した。

今後の研究の推進方策

本年度明らかにした様々な隣接層をもつ層状コバルト酸化物の異方性熱伝導率に関して完全な現象の理解を進め、論文投稿する予定である。
ECデバイスの研究に関して、我々の全固体WO3-ECTは作製の全プロセスを室温下で実現できる、この特徴を活かして次年度はフレキシブル基板上にデバイスを作製し、フレキシブルな全固体WO3-ECTの作製に取り組む。また近年、車などの防眩ミラーにECデバイスが使用されている。真に実用的なECデバイスは広い温度領域での動作が求められるため、次年度はECデバイスの広い温度領域での動作について調査を行う予定である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [国際共同研究] 釜山大学校(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      釜山大学校
  • [雑誌論文] Effects of vacuum annealing on the electron mobility of epitaxial La-doped BaSnO3 films2019

    • 著者名/発表者名
      Cho Hai Jun、Onozato Takaki、Wei Mian、Sanchela Anup、Ohta Hiromichi
    • 雑誌名

      APL Materials

      巻: 7 ページ: 022507~022507

    • DOI

      DOI: 10.1063/1.5054154

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Fast operation of a WO3-based solid-state electrochromic transistor2019

    • 著者名/発表者名
      Onozato Takaki、Nezu Yukio、Cho Hai Jun、Ohta Hiromichi
    • 雑誌名

      AIP Advances

      巻: 9 ページ: 025122~025122

    • DOI

      DOI: 10.1063/1.5089604

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Thermal conductivity tensor of NbO22019

    • 著者名/発表者名
      Cho Hai Jun、Kim Gowoon、Onozato Takaki、Jeen Hyoungjeen、Ohta Hiromichi
    • 雑誌名

      International Journal of Heat and Mass Transfer

      巻: 137 ページ: 263~267

    • DOI

      DOI:10.1016/j.ijheatmasstransfer.2019.03.135

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] WO3固体エレクトロクロミックトランジスタの高速動作2019

    • 著者名/発表者名
      小野里尚記, 根津有希央, Hai Jun Cho,太田裕道
    • 学会等名
      第66回 応用物理学会春季学術講演会
  • [学会発表] TDTR法による層状酸化物薄膜の熱伝導率の結晶方位依存性計測2018

    • 著者名/発表者名
      小野里尚記, Cho Hai Jun,Yi-Ming Chang, Yu-Miin Sheu, フウ ビン, 幾原雄一, 太田裕道,
    • 学会等名
      第79回 応用物理学会秋季学術講演会
  • [学会発表] Anisotropic thermal conduction behavior of a complicated layered structure oxide2018

    • 著者名/発表者名
      T. Onozato, H.J. Cho, Y-M. Chang, Y-M. Sheu, B. Feng, Y. Ikuhara, and H. Ohta
    • 学会等名
      The 2nd Workshop on Functional Materials Science
    • 国際学会
  • [学会発表] Thermal conductivity anisotropy of layered complex oxide2018

    • 著者名/発表者名
      T. Onozato, H.J. Cho, Y-M. Chang, Y-M. Sheu, B. Feng, Y. Ikuhara, H. Ohta
    • 学会等名
      The 19th RIES-HOKUDAI International Symposium 組[So]
    • 国際学会
  • [備考] 北海道大学電子科学研究所薄膜機能材料研究分野ホームページ

    • URL

      http://functfilm.es.hokudai.ac.jp/

  • [産業財産権] エレクトロクロミックトランジスタ、電子カーテン、情報表示記憶装置および防眩ミラー2018

    • 発明者名
      太田裕道, 小野里尚記
    • 権利者名
      北海道大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2018-243861

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公開日: 2019-12-27  

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