研究課題/領域番号 |
17J01330
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
田辺 健 筑波大学, システム情報工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 牽引力錯覚 / 非対称振動 / ハプティクス / ヒューマンインターフェース |
研究実績の概要 |
人は非対称振動を提示されると一方向に牽引されるような力を錯覚(牽引力錯覚)することが知られている.本年度はまず牽引力錯覚をどのような特性があるのかを心理物理実験を通して明らかにした.まず牽引力錯覚によって生じる牽引力の強度の主観的等価点(PSE)を上下法によって計測した.錯覚による牽引力と糸と錘による物理的な牽引力を比較させる課題を実験参加者10名に対して実施した.また,非対称振動を発生させるために使用した振動スピーカへの入力信号の振幅電圧を独立変数としたときのPSEの変化を求めたその結果,最大で0.43 Nの牽引力を知覚しており,入力信号の振幅電圧を制御することで0.43 Nまでの範囲の任意の強度の牽引力に制御できることが示された. 次に非対称振動の刺激時間と牽引力錯覚生起の関係を明らかにした.非対称振動の刺激時間を短くした条件で実験参加者10名に牽引される力の方向を強制二択で回答させ,方向の正答率で評価した.その結果,66.7 ms以上の非対称振動を提示することで牽引力の方向を90 %以上の正答率で弁別できることが示された. また牽引力錯覚において非対称振動の物理量に対応した錯覚の知覚特性を明らかにすることを目的に,錯覚を定量的に評価するためのプラットフォームとして非対称振動の振動加速度を制御できる装置を開発した.本装置ではユーザが振動子を把持した状態をモデル化し,伝達関数を同定することで非対称振動の振動加速度を制御することができる.本手法の妥当性を検証するために先行研究の非対称振動の再現を試み,それを振動周波数と実験参加者を変えて検証した.その結果,全ての条件で狙い通りの非対称振動を生成できることが確認された.この結果は本装置を用いて実験参加者間と振動周波数間の両方向で物理的に統制のとれた刺激を生成できたことを示唆する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では本年度は牽引力錯覚の基礎となる知覚特性を明らかにすることを目指しており,牽引力錯覚の強度特性や時間特性を明らかにすることができた.これらの牽引力錯覚の知覚特をまとめた論文が触覚分野におけるトップジャーナルのIEEE Transactions on Haptics誌に採択された.また牽引力錯覚の機序解明を目指し,定量的に錯覚を評価するプラットフォームを完成させ,Haptics Symposium2018にて発表することができた.以上のことから順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に完成させた実験装置を用いて心理物理実験を行うことで非対称振動の物理量に対応した牽引力錯覚の知覚特性を明らかにしていく予定である.また,実験によって得られた知見をもとに,一般的に使用されるボイスコイル型振動子で同様の牽引力錯覚を誘発できるかどうかを検証する.
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