研究課題/領域番号 |
17J01380
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
山口 諒 首都大学東京, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 種分化 / 数理モデル |
研究実績の概要 |
進化実験と種分化をつなぐ研究課題では、適応度地形理論を用い、生態的種分化と突然変異順位種分化が相対的にどれだけ生殖隔離に貢献するかを様々な環境シナリオで検証した。その結果、環境変化速度が速い状況や、より長期間の適応プロセスを経た集団間において、交雑個体の適応度が低下しやすいことを明らかにした。本課題について国内外での学会発表を行ったほか、現在論文を投稿済み(査読中)である。 また、もうひとつの研究課題として、系統情報を考慮した適応形質の遺伝的基盤を探る研究を進めている。系統的な制約のもとである形質が進化してきた事実に着目し、祖先復元によって配列の進化確率を計算することで、より効率的な候補遺伝子領域または塩基置換の探索手法開発を行っている。現在、配列進化と形質進化を結ぶ確率過程シミュレーションが完成し、パラメータ依存性を検証している段階である。次年度、ショウジョウバエ野生種の配列・形質データを伴う具体的な解析を行い、適応形質の遺伝学に関する議論を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[1] 種分化における生態要因の貢献度を定量化する理論研究 今年度は、適応度地形理論に基づいたシミュレーションを行い、環境変化速度が速い状況や、より長期間の適応プロセスを経た集団間において、交雑個体の適応度が低下しやすいことを明らかにした。また、戻し交雑個体の適応度の差を正規化することで、内因的な遺伝的不和合と生態的分化が相対的にどれだけ生殖隔離に貢献してきたかを定量する指標を定式化した。現在論文を投稿中であり、本課題は順調に進行したと考える。 [2] 系統情報を考慮した種分化率・絶滅率の推定 系統的な制約のもとでその形質が進化してきた事実に着目し、祖先復元によって配列の進化確率を計算することで、より効率的な候補遺伝子領域の探索手法開発を行っている。これまでの結果では、進化確率が系統樹情報に大きく依存して算出されることが示唆されている。今後、本手法のさらに詳細なパラメータ依存性を精査したうえで、ショウジョウバエ野生種に関するデータへの応用および解析を展開する。実証データに関しては、すでに出版されている文献情報を網羅的に整理することにより、多くの種について形質・生活史・DNA配列に関するデータを収集した。
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今後の研究の推進方策 |
形質・配列データの一部不足分についてはフィールド調査・分子実験を行うことで補完し、すでに開発したシミュレーションによって作成されたテストデータと合わせ、パラメータ推定を行う。また、先行研究の手法と比較し、推定値や精度にどのような違いがあるかを検証するほか、その進化生物学的な議論を行う。
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