研究課題/領域番号 |
17J01393
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
白瀧 浩志 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | テトラフルオロエチレン / 二酸化炭素 / 酸化的環化反応 / ニッケララクトン / アクリル酸エステル |
研究実績の概要 |
申請者はフッ素化学産業における基幹工業原料であるテトラフルオロエチレンおよびC1源として安価かつ地球上に豊富に存在する二酸化炭素を出発原料に用いたトリフルオロアクリル酸エステルの合成を目的とする触媒反応の開発に取り組んだ。フッ素を有するアクリル酸エステルから合成される含フッ素樹脂は、フッ素原子の特徴を反映した性質を有すると知られている。そのため、本研究の目的化合物であるトリフルオロアクリル酸エステルは新たな含フッ素樹脂の合成に使用できる有用なモノマーとして期待され、トリフルオロアクリル酸エステルを安価な原料から容易に合成できる触媒反応の開発は学術的のみならず、産業的な見地からも意義深いと考えられる。 申請者は現在、0価ニッケル上での酸化的環化反応を鍵段階とするトリフルオロアクリル酸エステルの合成反応に特に着目し、検討を行っている。本年度は鍵段階となる0価ニッケル上でのテトラフルオロエチレンと二酸化炭素との酸化的環化反応が進行する条件について明らかにするため、量論反応の検討を行なった。鍵段階である酸化的環化反応はテトラフルオロエチレンと二酸化炭素はどちらも電子不足な基質である、それら2つの基質は0価ニッケルに対する配位力が異なるという2点の理由からを進行させる事は困難だと予測された。しかしながら申請者は、NHCを配位子として用い、二酸化炭素がテトラフルオロエチレンよりも過剰量が系中に存在する条件下にて検討を行ったところ、テトラフルオロエチレンと二酸化炭素から成るニッケララクトンが低収率ながら得られる事を見出した。現在、申請者は目的のテトラフルオロエチレンと二酸化炭素から成るニッケララクトンの収率の向上を目指し、新規配位子の設計と共に、その合成に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は0価ニッケル触媒存在下、テトラフルオロエチレンと二酸化炭素を出発原料に用いたトリフルオロアクリル酸エステルの合成反応に取り組んでいる。本触媒反応は0価ニッケル上にて進行するテトラフルオロエチレンと二酸化炭素との酸化的環化反応が鍵段階である。一方、テトラフルオロエチレンと二酸化炭素はどちらも電子不足な基質である事、0価ニッケルに対する配位力が異なる事から、その反応を進行させる事は容易ではなかった。しかしながら、申請者は配位子として高い電子供与能を有するNHC配位子を用い、二酸化炭素がテトラフルオロエチレンよりも過剰に存在する条件下にて量論反応を検討した結果、目的とするテトラフルオロエチレンと二酸化炭素からなるニッケララクトンが低収率ながら生成する事を見出した。このように、これまでの検討から得られた結果は本触媒反応の達成に重要な知見を与えるものであるため、おおむね順調に研究が進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
申請者は現在、テトラフルオロエチレンと二酸化炭素とニッケルから成るニッケララクトンの収率の向上を目的として新規NHC配位子の設計および合成に取り組んでいる。新規NHC配位子の合成後、それを配位子に用いた量論反応を行い、収率良く目的のニッケララクトンが得られるか検討を行う。また得られた錯体は合成・単離を別途行い、その錯体に対して、ジシランやジボロンをはじめとする種々の還元剤を作用させることで目的のトリフルオロアクリル酸エステルが得られるか検討を行う。 続いて、量論反応により得られた知見をもとに、触媒量の0価ニッケルと開発した新規NHC配位子存在下、テトラフルオロエチレンと二酸化炭素と還元剤を用いた触媒的なトリフルオロアクリル酸エステルの合成反応を検討する。また、合成したトリフルオロアクリル酸エステルは別途、重合反応に関する検討を行い、含フッ素樹脂の合成に取り組む。
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